ナチュラルワインが気付かせてくれたこと

「人の顔が見える食材を、届けたい。」カーリカ・リ 堤亮輔さん

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「人の顔が見える食材を、届けたい。」カーリカ・リ 堤亮輔さん

おいしんぐ!編集部
都立大学駅の高架下に、いつも賑わうイタリアンレストランがある。オーナーシェフの堤亮輔さんが構える『カンティーナ カーリカ・リ』。ここの特徴はなんといっても、幅広いイタリアナチュラルワインの品揃え。そして、国内のさまざまな農家や生産者とのつながりによって仕入れる新鮮な素材を使って作る料理だ。

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この店を含め、目黒区内で3店舗を経営している堤さん。1店目の『リ・カーリカ』は5年ほど前、たった3人で開店した。2店目となる『カンティーナ カーリカ・リ』は3年前にオープンし、その後『あつあつリ・カーリカ』と続き今では従業員数は16人。おいしい料理とナチュラルワインはもちろんなのだが、店のスタッフたちが明るく楽しそうに仕事をしているのも、この店の大きな魅力のひとつだ。


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イタリアの酒蔵をイメージしたという店内。ちなみに「カーリカ・リ」と「リ・カーリカ」は、ともにイタリア語で「リ(再)チャージする」という意味。

堤 亮輔さんがイタリア料理を選んだ理由

おいしんぐ!編集部

ーーそもそも、堤さんはなぜ料理人の道に?

昔からものを作ることが好きで、何かしらクリエイティブな仕事がしたかったんです。料理は、作ったものをすぐに評価してもらえるのがおもしろくて。通っていた大学を中退して、イタリアのトスカーナにあるアグリツーリズムの施設で寝泊まりしながら学びました。

ーーイタリア料理を選んだのはなぜだったのですか?

いろいろ理由はあるのですが、ひと言で言ってしまうと「パスタが好きだから」かな…。トマトソースのスパゲティが大好きなんですよ(笑)。

ーー明快ですね! その後はどうされたのでしょう?

イタリアから帰ってきて、21歳ぐらいで料理専門学校に入りました。その後はフレンチやイタリアン、和食のお店で働いたり、シェフを務めたり。ずっと「30代半ばには自分の店を持ちたい!」と思っていて、34歳の時に小さな店をオープンしました。

おいしんぐ!編集部

ナチュラルワインに出合い、大切なことに気付いた

ーーずっとナチュラルワインに的をしぼって出されていますよね。それはなぜですか?

今まで飲んできたワインと違う感じの惹き付けられ方をしたんです。何でおいしいんだろう? こんなに惹き付けられるんだろう? って考えていったら、「あ、人なんだ」ってわかって。

ーー「人」ですか?

人の顔が見える、熱意を感じられる…そんなワインが多かったんです。料理に対しても同じで、ぼくは科学的な調味料を使わないし、食材のおいしさが一番だと思っているんです。なぜこのトマトはおいしいんだろう?…そうか、糖度が高いからか…じゃあそれは誰がどこで、どんなふうに作っているんだろう?…って、自然と生産者に意識がいくようになったんです。

おいしんぐ!編集部

ーーなるほど。

「ワインも食材も、人が作っているものなんだ」と、ナチュラルワインを通して強く意識できたんですね。だからこそ今、生産者の方々とつながることができています。生産者以外にも、ワインに携わるインポーターさん、酒屋さん、それから同じワインを出している全国のお店の人たちとも知り合うことができて。これも全部、ナチュラルワインのおかげなんです。

ーー「わかる人にわかるワイン」を仕入れている人たち同士で結束できるんですね。

初めて会った人ともすぐ意気投合できちゃうんですよ(笑)。


本人提供

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ーーワインや食材は、どのように選んでいるんですか?

できるだけ、その人に会いにいくようにしています。インポーターさんが会う機会を作ってくれることもありますし、スタッフと一緒に今年もイタリアのフリウリに行って、10カ所ぐらい巡る予定です。

ーー人に会って、確かめるんですね。

一度会って、どんな家族がどんな考えを持って作っているのかを知ると、そのワインが愛しくてしょうがなくなってくるんですよ(笑)。

おいしんぐ!編集部

ーー本当に「人が見える」わけですしね。

はい。それから生産者さんのところに行くと、どこも料理がおいしい。シンプルなんだけど、素材の味が活きた料理なんです。国内の農家さんを巡っていると、「あ、このキュウリは、ピエモンテで食べたあの味に近いな。じゃあ絶対あのワインと合うはずだ」みたいなひらめきもありますし。


本人提供

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ーー人との出会いによってまた新しい料理が生まれる、と。

そういう「人」たちのおかげで、料理人として成長させてもらっている気がするんですよね。もちろん本での勉強も大事だけど、いろんな出会いや経験を通して、イタリア料理ってこういうものだったんだなっていうのを、身体で感じ取れるようになったので。うちのスタッフにもできるかぎり経験してほしいと思っています。

ーー堤さんのお店は、スタッフのみなさんがフレンドリーで居心地がいいですよね。

ありがとうございます。ぼくはずっと、一人でやるよりもチームが作りたかったんですね。サッカーみたいに、みんなでパスを回してゴールまでつなげていくのって、最高じゃないですか。ぼく自身も飲食業界にいて20代はほとんど休めなかったから、自分の会社では「こういう働き方ができてよかったです」って言ってもらえるようにしたくて。幸いなことに、本当にいいメンバーが集まってくれています。

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オーナーシェフ・堤 亮輔さんのこだわり


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どこで誰が作ったどんな味の素材かを語る堤さん。生産者の思いを真摯に受け止め、最高の料理にして届けてくれる。


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車を走らせ、堤さんが直接仕入れに行くという三浦の魚介。この日そろっていたのはメジマグロ、イナダ、サバ、キンメダイ、イシモチ。まるで寿司屋!? と思うくらい、スピーディかつ丁寧に下処理を済ませられている。「その日にとれた魚や野菜を、新鮮なうちに出せることに喜びを感じるんです」と堤さん。


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この日の食材として用意されていた、フィレンツェナス、万願寺トウガラシ、摘花ミカン、トウモロコシ、パプリカ。「このフィレンツェナスは、三浦の『高梨農園』さんのもの。チャレンジ精神を持ってイタリア野菜などを作っている、素晴らしい農場さんです」


おいしんぐ!編集部

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原田さんが作る熊本産モッツァレラチーズと、三浦でとれたイチジクを合わせた「イチジクとモッツァレラ」 1,700円(税抜)。牛から絞ったばかりの乳を同じ敷地内にある工場に直送して作るという新鮮なモッツァレラは、濃厚さとコクがひと味もふた味も違う。イチゴやモモなど、合わせるフルーツが季節によって変わるのも楽しみだ。

では、最後に…。
堤さんにとって、 「おいしい」とは何でしょうか―—?

やっぱり「人の顔」ですね。食材をつくる生産者がいて、それを届ける人がいて、料理をする人がいて…。いろんな人と人がつながって生まれるものだと思っています。

おいしんぐ!編集部

※お店の情報は記事投稿日時点のものです。訪れる際には予め営業日時をお店にご確認ください。

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