「Premium DEER 安芸高田鹿」の誕生。そして•••

「すべて、鹿がつないでくれた」 ――鹿との出会いから始まった、広島と世界をつなぐプロジェクト。おいしんぐ! プロデューサー 金沢大基 <Vol.1>

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「すべて、鹿がつないでくれた」 ――鹿との出会いから始まった、広島と世界をつなぐプロジェクト。おいしんぐ! プロデューサー 金沢大基 <Vol.1>

おいしんぐ!編集部

これまでに自社メディアの開発と運営、映画宣伝や海外旅行のPR、日本全国の料理人や生産者を取材し届けるWEBコンテンツなど、さまざまな分野でメディアコンテンツを作ってきたプロデューサー、金沢大基。

小学・中学・高校とサッカーに打ち込み、大学時代はバックパック旅行にはまった。大学を卒業後、大手旅行会社(JTB)やIT企業を経て2013年に独立。最初に立ち上げたメディアは「TRIPPING!」という東南アジアを中心とした旅行情報のWEBサイトだった。いま世界で起きていること、それを体験できる旅のおもしろさをシェアしたい。マニアックな現地情報が集まる「TRIPPING!」は、じわじわと人気を広げ、各国の政府観光局の仕事も請け負うようになった。

おいしんぐ!編集部

海外で出会うさまざまな人から「いま、日本では何がおもしろいの?」と聞かれ、うまく答えられない自分がいた。日本のおもしろさって、なんだ? あらためて考えを巡らせていくと、日本の食――日本の素晴らしい生産者や料理人たち――に大きな魅力を感じていることに気づいた。

そうして2017年に立ち上げたのが、この「おいしんぐ!」だった。いま、起こっていること。いま、おもしろいこと。フレッシュでリアルな声や熱を届けたい。だから「TRIPPING!」と同じく、現在進行系の「ing」をつけた。

おいしんぐ!編集部

ところが、「おいしんぐ!」の取材で全国各地を飛び回るうちに、想像もしていなかったある出会いを果たす。その出会いとは――深刻な害獣問題にもなっていた野生の「鹿」だった。増え続けている鹿を、豊かな食材に変えることができないだろうか?

おいしんぐ!編集部

「鹿には可能性がある!」「鹿がおもしろい!」と動き出した金沢に対し、「鹿肉なんて人気が出ない」「うまくいくわけない」「お金にならない」という意見も多かったという。それでも、金沢には自信があった。鹿は、高い技術をもって処理や調理をすれば確実においしい。和食・洋食・中華などさまざまな料理に応用ができる。個体によって差があるからこそ、畜産にはない魅力やおもしろさがある――。信頼する料理人たちからは、ポジティブな言葉しか出てこなかったからだ。

2019年から東京と広島との2拠点生活をはじめ、24年には家族で移住を決意。移住と同時に新たな株式会社「cica(シカ)」を立ち上げ、「鹿」を起点に食・環境・観光などにおける地域の問題を解決すべく、教育にも力を入れて新しいチャレンジを続けている。これまでになかった新しい鹿ブランドの立ち上げと、その価値を伝えるための活動、そして未来に向けて思い描いていることを聞いた。

 

「Premium DEER安芸高田鹿」誕生

運命的な出会い。そのお相手は…鹿!?

おいしんぐ!編集部
――神奈川県藤沢市で生まれ、東京で就職。30代から起業して、メディアの業界でバリバリと働いてきて、いまは広島へ移住。「鹿」を起点としたプロジェクトに力を注いでいます。

いやぁ、鹿と出会ったことで仕事も環境もガラッと変わりました。まさかこんな展開になるとは! って、自分でも驚いています(笑)。

――2013年5月。自身で立ち上げた株式会社iDでは、アジア旅の楽しさを提案する「TRIPPING!」、日本の「おいしい」を紹介する「おいしんぐ!」といったWEBコンテンツ事業や、映画宣伝に海外旅行のPR事業、企業のブランディングに関わる事業などをされていました。なぜ、「鹿」だったのでしょう?

「おいしんぐ!」のネタを探しに、よく地方へリサーチに行っていたんです。あれは2018年10月のこと。リサーチに訪れた広島の安芸高田市で、一番印象的だったのが鹿でした。朝から晩まで、野生の鹿が頻繁に出没するんです。車を運転しているとき、急に道路へ飛び出してくる鹿がいてびっくりしたり。

おいしんぐ!編集部

――野生の鹿は、地域の害獣問題にもなっていますね。

そうなんです。地元の人からは「交通事故が多くて困っている」「農作物を食べられてしまうのでやっかい者だ」と聞きました。また話を伺うと、安芸高田市の人口を、鹿の数が超えているのでは?というくらい多くて。鹿や猪による被害額も大きくなっていると。


鹿による食害の痕跡(樹皮) おいしんぐ!編集部
鹿による食害の痕跡(新芽) おいしんぐ!編集部

――被害も大きいんですね。

ですが、鹿肉といえばフランス料理やイタリア料理などでは貴重な食材であり、地域によっては日常的に食べる食材じゃないですか。鹿肉はヘルシーでおいしい食材だと認識されています。それと比べて日本人にはあまりにもなじみがない。地元の人たちからもほとんど食べたことがなかったと聞きました。

おいしんぐ!編集部

――たしかに、日本ではなんとなくのイメージで、ジビエ=臭みがある、硬いといった印象を持っている人もいらっしゃるかもしれません。

ヨーロッパと日本とでギャップがありすぎる。このギャップが、おもしろいなと思ったんです。うまくブランド化すれば、新たな価値を作り出せるのではないかと。

信頼する料理人たちが「おいしい」と言ってくれた。

――「害獣」と「貴重な食材」の両面がある。そこに目をつけたのですね。

はい。そこでまず、鹿の害獣問題と向き合い地道に活動している「安芸高田市ジビエ振興協議会」と、狩猟歴40年以上のハンターさんとコンタクトをとるところから始めました。現地でお話を聞いていくと、確かな腕を持つハンターさんが鹿の身体にストレスがかかりにくい状態で仕留めること。1時間以内に衛生的な食肉加工場に運びこまれ、高い加工技術で解体・加工されていることもわかりました。


2019年、ハンター兼解体士である古門正文氏の取材当時 おいしんぐ!編集部

――鹿肉を食べる慣習はないけれど、実際に良質な鹿肉を生産するポテンシャルはあったということですね。

ええ。狩猟の腕はもちろん「鹿肉の状態を見分け選別する技術」と「加工し、保存する技術」の高さがカギだったんです。安芸高田市にはその両方があり、何よりも自然が豊かである。僕がやるべきことは、鹿のおいしさを証明し、世間に知ってもらうこと。そこで2019年から実験を開始しました。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

――実験?

鹿肉を安芸高田市から東京を中心に信頼するシェフのもとへ送り、料理をしてもらったんです。すると、ミシュラン2星の料亭や、人気イタリア料理店のシェフなどから高い評価をいただけました。「臭みがなくやわらかい」「肉の処理方法を含め、本当に素晴らしい」「家畜と違って、季節によって個性が出るのがおもしろい」「さまざまな料理に展開できるし、ナチュラルワインにも合う」と言っていただけました。

おいしんぐ!編集部

――料理の食材として、プロからもお墨付きを。それはおいしさの自信になりますね。

「地域の害獣」が「おいしい、健康的な天然食材」に変わったんですよね。さらに、鹿肉は高タンパクで低脂質、鉄分やビタミンB群が豊富なんです。安芸高田市域の約8割を占める森林が育んだ豊富な栄養価をもつ鹿に敬意を込めて、「Premium DEER 安芸高田鹿」と名付けました。ここから、全国の飲食店への流通にも力を入れていきました。

※Vol.2では中編、vol.3では後編のインタビューを掲載していますので併せてお読みください。


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