食卓を楽しくする”器と食の美味しい関係”

「有田焼と食材」を追いかける器旅<中編>

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「有田焼と食材」を追いかける器旅<中編>

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磁器の町「有田」を中心に、器と食の魅力を追いかける旅をしてきたタベアルキスト一行。続いて訪れたのは有田焼のはじき絵付け体験です。

<前編>はこちら。

有田焼のはじき絵付け体験


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バロック建築の華、ドイツ、ツヴィンガー宮殿をそのまま再現されている「有田ポーセリンパーク」。園内の有田焼工房では、自分オリジナルの有田焼を作ることができます。素焼きの器に、染付で絵を描く短時間で体験できるコースから、ろくろを使った本格的な陶芸まで様々なコースが用意され、予算や時間に応じて選べるのが嬉しい。


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今回体験したのは、「はじき絵付け」と呼ばれるもの。特殊な薬液で絵を描くと、釉薬をかけた際、描いた部分だけが釉薬をはじき、素地の模様として浮かび上がる。 線がつぶれないように、なるべく大きく、太く、大胆なデザインでお願いしますとレクチャーを受けて、いざスタート。


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描いてみると、自由に筆を走らせる楽しさと、思い通りに描くことの難しさの両方を感じる。まっすぐの線を均一な太さで描くことは難しく、今まで見てきたようなお皿の細かい文様を描くには、どれだけ高い技術が必要なのか痛感させられる。体験することで初めて分かる職人技のすごさ。薬液で手を真っ青にしつつ、大胆に筆を走らせる。


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ナイフとフォークをモチーフにしたデザインを施してみる。洗練された有田の文様のようには到底行きませんが、自分だけのオリジナルデザインはなかなかの達成感。焼き上がりは約1か月後。

有田ポーセリンパーク 有田焼工房

 

酒蔵見学&日本酒を味わう


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有田ポーセリンパーク内にある「宗政酒造 有田蔵」は、日本酒、焼酎、ビールと複数のお酒を一社で製造する、数少ない酒蔵。「みやげ屋 蔵」のショップに並ぶ、多種多様なお酒は壮観の一言。看板商品の麦焼酎「のんのこ」、日本酒「宗政」をはじめ、様々なお酒を試飲して、自分好みの一本を探すことができる。


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ショップから少し離れたところには、醸造蔵があり、見学をすることができる。所要時間は約30分ほど。宗政酒造の酒造りでは、品質を大きく左右する水は、水源の森百選にも選ばれている黒髪山の水系のものを使用。麦焼酎の原料である二条麦や、日本酒の原料である酒米は全て佐賀県産のものを使用している。厳しい品質検査も行われ、「The SAGA認定酒」として認定を受けた後、出荷されている。


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昔から受け継がれた技術などは残しつつ、製造工程には最新の技術も導入。歴史を重ねながら酒造りもどんどん進化しているそうだ。見学専用の通路から、様々なお酒造りの方法を学びつつ、醸造タンクやパッケージングマシンが動く様子などをみることができる。


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今回購入したのは、秋限定のひやおろし原酒宗政。ひと夏を超し、頃合いよく熟成されたお酒は、どっしりとした飲み口と、ふくよかな香り。お米の味がぎゅっと詰まった、お酒本来の濃厚な味わいが楽しめる。

宗政酒造 有田蔵

 

有田焼の歴史を語る上で欠かせない「柿右衛門窯」


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柿右衛門窯には、この17世紀の初代から現在の15代に至るまでの柿右衛門窯の歴史や、柿右衛門様式の作品を展示した「柿右衛門古陶磁参考館」を併設している。 「柿右衛門様式」の特徴である、余白を残して描かれる絵画のような構図はとても美しい。


第15代酒井田柿右衛門作品 「濁手野罌粟文花瓶」 著者撮影
柿右衛門窯独自の特徴であるのが、「濁手」。 暖かみのある乳白色が特徴の色絵磁器で、「色絵」が生きる素地として1670年代にその製法が完成したといわれている。このやわらかな色の素地が「柿右衛門様式」の余白となるため、作品に独特の暖かみが出る。江戸中期にオランダ東インド会社による輸出が減少したことで、一時生産が途絶えてしまいましたが、第12代と第13代の酒井田柿右衛門が古文書より製法を復元し、その陶製技術が認められ、「濁手」は1971年に国の重要無形文化財の総合指定を受けました。


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中央が「濁手」作品、左右はそれぞれ天草陶石と泉山陶石を中心にした作品だそうだ。 並べてみると「濁手」独特のやわらかな乳白色の素地がよくわかる。


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かわいらしい鳥と華やかな花が描かれた「牡丹鳥紋」は代表的なデザインのひとつ。ティーカップなどの洋食器になっても違和感なく素敵なのは、普遍的なものとして確立された美しいデザインだからだろう。


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現在の柿右衛門窯では「濁手」の他にも「染付」・「錦手」・「染錦」と様々な磁器を作っていますが、図案は昔からの型をそのまま使用している。下絵は男性が、色絵は女性がという絵付け作業の分業も昔のまま引き継がれていて、描くにも花びら一枚、葉一枚と制作手順がすべて決まっている。作業を完全分業制にし、アレンジなく同じものを作り上げることがスペシャリストを育て、また伝統を守ることにも繋がっている。

柿右衛門窯

 

蔵を改装した喫茶でゆったりと


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「明治夢庵」は有田の陶器市のメインストリートである「内山重要伝統的建造物群保存地区」の中ほどにある。江戸時代から昭和前期までに建てられたという古い街並みの一角で、「明治夢庵」の建物もレトロな雰囲気の造り。店名に「明治」と付いていますが、明治時代の建物ではなく、先代社長の北川明治さんの名前にちなんだものだそうだ。


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店に入ると目に飛び込んでくるのは、動物のミニチュア。犬や猫、魚、干支など様々なモチーフのアイテムがある。 これらは「ミクロス」と呼ばれ、先代社長の父上が昭和26年に創業された「北川陶藝」の作るれっきとした有田焼。輸出品として人気を博したことから、海外にも多くのコレクターがいるそうだ。この「ミクロス」を愛する人と語らう憩いの場を作りたいという先代の思いを継いで、「明治夢庵」は作られました。「ミクロス」ショップの奥がカフェスペースとなっている。


デザートプレート:550円(税込)著者撮影
お好みのケーキと選べる自家製のジェラート、焼き菓子がセットになったプレート。有田のみどころでもある「トンバイ塀」をモチーフにしたケーキ「トンバイ」は、ピスタチオのムースとフランボワーズをチョコレートクリームで包んだケーキ。 軽い口当たりのムースと口溶けの良いチョコレートクリームがフランボワーズの酸味とマッチ。 焼き菓子も保存料などは無添加。サクサクで抹茶の香るクッキーや、しっとりとしながらも空気を含んだ軽さのあるきめの細かいシフォンケーキは、しっかりとしたフランス菓子作りの技術を感じられる。自家製のいちごのジェラートにいたっては4日間かけて作る手の込みよう。


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デザートプレートにあわせていただきたいのがオリジナルブレンドのコーヒー。水質の良い有田の水を生かすようにブレンドされていて、軽い酸味とコクが感じられるバランスの良いコーヒー。店主がじっくりとハンドドリップで淹れてくれます。あでやかな模様のカップもとても素敵だ。


著者撮影
デザートプレートのお皿や、コーヒーのカップが有田焼なのはもちろんのこと、カトラリーまでもが有田焼。手に持ったときの感触が金属とは違う磁器の滑らかさが感じられ、他の食器にも合わせやすいアクセントになりそうなデザインがとても気に入りました。「ミクロス」もそうですが、小さいものの細部まで美しく作るセンスは日本人ならでは。

明治夢庵

 
後編につづく。

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