フランス料理への『入り口』を作りたかった

中目黒でカジュアルに楽しむ フランスの新ビストロノミー 「La gueule de bois」布山純志さん

インタビュー
東京都
中目黒・三軒茶屋・池尻大橋
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中目黒でカジュアルに楽しむ フランスの新ビストロノミー 「La gueule de bois」布山純志さん

おいしんぐ!編集部

これまで80人を超える料理人たちにインタビューをしてきた「おいしんぐ!」。さまざまなシェフに「あなたはなぜ、料理人になったのですか?」と尋ねてきた。もともと料理や食が好きだったから。小さい頃から飲食業が身近にあったから。中学や高校を出て料理学校を進路に選んだから……そんな答えが多いなかで、今回のオーナーシェフは明らかに異色だった。「アメリカのカルチャーとヒップホップが好きだったから、地元のアメ車屋さんで働いていた」。料理人になるとは考えていなかったのだという。

続けて語られたのは、滋賀県出身のアメリカ好きの少年が、イタリア料理をきっかけにフランスに渡り、食通に愛される中目黒の人気ビストロを構えるまでのストーリーだった。店の名は、フランス語で「二日酔い」を意味する「La gueule de bois(グルドボワ)」。料理や店構えなどさまざまな部分に、そこに至るまでの経験と努力が、シェフ布山純志さんならではの強い個性となって表現されている。

もともと、フレンチレストランへ行き慣れていない人たちのために「フランス料理への『入り口』を作りたかった」という布山さん。だからこそ、手の混んだ料理や質のいいナチュラルワインがメニューに並ぶにも関わらず、店の雰囲気はもちろん価格帯も実にカジュアルだ。オープンから3年。東京にいながらパリの新しいビストロノミーを体感できる場所として、着実に人気を集めつつある。

南フランス・ニースに行って変わったフランス料理のイメージ。仕入れのときに大切にしている生産者の思い。今後さらに力を入れていきたいナチュラルワインのこと……。布山さんのこれまで、いま、そして未来について、たっぷりと語ってもらった。

外観 おいしんぐ!編集部
東急東横線中目黒駅から徒歩約7分。店が立ち並ぶ大通りから裏手に入った、静かな一角にある「グルドボワ」。
「グルドボワ」とはフランス語で「二日酔い」。布山シェフ自らのフランスでの経験をもとにつけられた店名だ。


内観 おいしんぐ!編集部
内観 おいしんぐ!編集部

カウンターは10席、テーブル席は5~6人が座れる。それぞれのお客さんのペースに合わせ、絶妙なタイミングで温かい料理が提供される。

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好きなことを仕事にしたい。でも、やりたい仕事が見つからない。

おいしんぐ!編集部
アメ車の販売からシェフに転身、さらにイタリア料理からフランス料理にシフト、という経歴を持つ布山純志さん。料理の一皿一皿にその個性が発揮されている。

——布山さんがシェフになった経緯を教えてください。

ぼくは滋賀出身なのですが、高校卒業後は進路を決めず、アメリカのカルチャーとヒップホップが大好きだったこともあって地元のアメ車屋さんで働いていました。オーナーと一緒にアメリカに行って、アパレルや車の買い付けに回らせてもらったりして。

——初めから料理人を目指してはいなかったんですね。

もともと「好きなことを仕事にしたい」と思っていたんです。だから好きなことをやっていただけなんですけど。その後もトラックに乗ったりとかいろいろやってみたけど、どれも仕事としては「これじゃない」っていう感じで。最終的にやりたいことが見つからなかったんです。それで東京に出てきました。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——何歳の頃ですか?

23歳ですね。とりあえず、まだ経験したことがなかったサービス業をやってみようと思いました。最初はパチンコ屋さんのアルバイトでしたね。笑顔で「いらっしゃいませ!」みたいな、いわゆる接客の仕方を教えてもらって。あ、自分はこういうこと意外とできるんだなと気づきました。

飲食業もやってみようと思って、朝8時まで営業しているいわゆる場末の居酒屋で働き始めました。時給を聞かずに入ったら、640円だったんですよ。大変でしたけど、お世話になったので配達のピザ屋さんと掛け持ちしながら1年ぐらい働きましたね。

——そこがキャリアのスタートだったんですね。

その後、出版社が経営する自由が丘のダイニング「パームスカフェ」に入りました。パスタやピザなどイタリア料理をベースとした70年代のアメリカンダイニングだったんですが、他にも系列店が数店舗あったので、研修などを通していろんな料理を広く浅く経験しました。

6年間働いた後、代官山の「リストランテASO」に行った先輩からお誘いを受けたんですが、ぼくは料理学校も出ていないし普通の人とキャリアも違うので、入っても自分に何ができるだろうかと考えたんです。それで、いっそイタリアに行こうかなと。ただ、イタリアにはビザがないから、まずフランスでビザを取ってからにしよう、と。

おいしんぐ!編集部

——本格的にやりたい仕事が見つかったということですね。

そのときは29歳でしたね。フランスに着いたときは、住む場所しか決めていなかったんです。まずは仕事をしなければと、日本人が経営するレストランで1ヶ月働きました。だけど、ここまできて日本人と働いていてはだめだなと。なんとか周りがフランス人だけの環境を探して、たまたま見つかったのがニースの旧市街にあるビストロでした。「本当はイタリアに行きたいんだけどな」と思いながらも、その店で食べた料理がとにかくおいしかったんです。

 

フランス人の感性と感覚を肌で感じた修行時代。

おいしんぐ!編集部

——ニースといえば、南フランスにある美しく温暖な海沿いの街ですね。

ニースでは食材もかなりイタリアに近いんです。ぼくが日本にいたときに思っていたフランス料理と違いました。いままでイタリア料理だと思っていたものでも、フランス人が作るとイタリア料理のようなフランス料理ができていたり。そこに感動しましたね。

イタリアへ行くよりも、ここで働きながらフランス人の感覚で勉強するほうがいいなと思ったんです。それまでの自分の料理経験と、これから継続してやっていけそうなことがつながった。それで、フランス料理に転向を決めました


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——いい出会いがあったのですね。そこではどんなことを学びましたか?

自分の中では、日本語を喋らない環境で働くことが一番大事だと思ってやっていました。ぼくの料理のレベルも考えて、星付きレストランで技術を上げていく作業をしても意味がないなと。フランス人は感性も感覚も味付けの仕方も根本から違うので、それを学ぶことを大事にしていましたね。あとは自分が気候や風土を通して感じることを意識するようにしていました。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——そのお店の料理はどんなスタイルだったのでしょうか?

すごくシンプルでした。肉はもちろん、魚介も比較的よく使っていましたね。シェフが日本フリークな人だったので、イカの塩辛を作ったり、マグロを買ってきてタタキやボッタルガ(カラスミ)にしたりと、日本っぽい仕立てを意識した料理もありました。カラスミはフランス料理というよりはイタリア料理に多いんです。そういう意味でも、イタリアに近いところがありましたね。

シェフはその店で10年ぐらいやっている人だったんですが、それ以前は旧市街で一番おいしいといわれるお店で3~4年修業しただけだと言っていて。さらにその前はカンヌでDJをやっていた人で、そういうところも共感が持てました。

おいしんぐ!編集部

——異色の経歴という共通点が(笑)。

彼は本当に、感性で料理する人でしたね。朝来て仕込みをしているときに「違う!」って言い出して……メニューが昨日言っていたことと変わっちゃうんですよ。それについていくのは大変でした。

7時~12時の夜だけの営業で、60席が1回転半して毎晩90人はお客さんが入るという忙しいお店でしたね。おかげで作業のスピードが速くなりました。ナチュラルワインとの出会いもこのお店でしたし。お店の人たちには、本当によくしてもらいましたね。

 

ニースで知ったナチュラルワインの魅力。

おいしんぐ!編集部

——ナチュラルワインとの出会いについて教えてください。

ぼくはそれまでイタリアンをやっているものの、なんとなくワインが苦手だったんですよ。もともとビールや焼酎を飲んでいたから、ひと口でけっこうな量を飲んじゃって、すぐに酔っ払って……。ニースの店で初めてちゃんとナチュラルワインを飲んだんです。おしゃべりしながらゆっくり飲むっていうのがワインなんだとわかったし、なにより飲みやすかったですね。

その店は、ナチュラルワインしか置いていない店でした。ブドウ作りやワイン醸造を未来の子どもたちに伝えていくには、いままでのような作り方をしていてはだめだというところから、酸化防止剤や農薬使用量を極力減らして作っているのがナチュラルワインなんだと。ナチュラルワインの始まりにはサステナブルな考え方があるということも、ここで教えてもらいました。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

フランスを中心としたナチュラルワインは、自らが試飲しおいしいと思ったものだけを厳選。10月からはワインセラーが拡張され、ますます楽しみが広がりそうだ。

——職場の仲間と一緒に飲んだりも?

料理人もサービスのスタッフも、毎回開けておいしいワインがあったら「いいのが開いたよ」って、持ってきて味見させてくれるんですよ。そしてほぼ毎晩、営業が終わった夜中1時からまかないを食べながらワインを開けて、みんなで3~4時ぐらいまで飲んでいましたね。

——うらやましい環境です。そうした経験が、布山さんのいまにつながっているんでしょうね。その後はどうされたのでしょうか?

料理の技術を覚えるための修業だったら普通は何店舗か渡り歩くと思うんですけど、ぼくの場合はその店と人が好きで、今後も彼らとずっと繋がっていたいぐらいだったので、1年間その店にいました。

本当はもっと長くいたかったんですが、ワーキングホリデーのビザが1年間で切れてしまう関係で、日本に戻ることにしました。そのときちょうど30歳で、日本でもう一度フランス料理を根本からやろうと。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——戻ってきてからは?

フランスで知り合ったシェフの店、銀座の「レストランイシダ」で3年働きました。35歳までに独立しようと決め、朝から晩まで働いた後の時間を使って、フランスで買い漁った料理の本を読んでは詰め込んでいましたね。「時間はここしかない」と思って、3年間ひたすらやりました。

 

フランス料理への「入り口」を作りたい。

おいしんぐ!編集部

——そしてこの店をオープンされたのですね。店名はどのようにつけたのでしょうか?

2018年11月28日にオープンしました。その少し前、10月の後半から11月にかけてフランスに行ったんです。お世話になった知り合いに挨拶したかったのと、パリやニースを回って新しい料理の創作のためのインプットをしようと思って。店名はそのときに決まりました。

「La gueule de bois(ラ・グルドボワ)」はフランス語で「二日酔い」って意味なんです。フランス滞在中は1食1食を無駄にしたくなかったのですが、ある晩5年ぶりぐらいに会った友達と飲みすぎて、次の日のお昼をすっぽかしてしまったんです。フランス語でこのことを説明して謝らなきゃと思って、調べてみたらこの言葉が出てきました。「あ、これ、お店の名前にいいんじゃない?」って(笑)。

おいしんぐ!編集部

——なかなか他にはないですよね。

たまにフランス人のお客さんが、店名から見つけて来てくれたりします。「クールだ」って言ってくれますね(笑)。もともとぼくも、ネガティブを笑いに変えちゃうようなフランス人のエッジやウィットのきいたジョークが好きだったんですよ。前の晩に飲んでいた友達にも話したら「そんな面白い名前の店だったら行きたいよ。いいんじゃない?」って言ってくれたこともあって、決めました。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——そのときに見てきたフランスは、どうでしたか?

やっぱり日本で食べるものと感性が違っていたし、以前と比べても進化していましたね。盛り付けはもちろん、「ここでこれを合わせるのか!」という料理が多く、さらに新しいものを学ばせてもらいました。

ぼくはフランスの「ビストロノミー」……つまりビストロであってガストロノミー(美食)でもある、きれいな盛り付けでビストロの格で食べられる、そういう店が大好きなんです。状況が落ち着けば、本当は1年に1回ぐらいは自分の中の更新・確認も含めてまた行きたいなと思っています。

おいしんぐ!編集部

——そんなビストロノミーの楽しさを、布山さんがここで届けていらっしゃるんですね。この店をオープンするにあたってのコンセプトはどんなものでしたか?

最初は、フランス料理のレストランに行く「入り口」を作りたかったんです。まだ行ったことのない人や行き慣れていない人たちがここへ来て、カジュアルに楽しんでもらえるような。いまはオープンして3年目ですが、どちらかというとレストランに行き慣れている人が普段使いで来てくださっている感じですね。

自分が当初想像していたコンセプトと違うかたちにはなりましたが、みなさんに満足していただいて、よく言っていただけるのでありがたいです。お店を出してから、答えはすべてお客さんが出してくれているという感覚があります。店のメニューも「この料理が好きだから復活させてほしい」と言っていただいたりして、ある意味お客さんと一緒に作り上げているのかもしれないなと。

 

仕入れのときに浮かぶ、お客さんの顔。

おいしんぐ!編集部

——今日作っていただいたお料理について教えてください。

前菜は「ズッペリーニ」です。カッペリーニというイタリアの細いパスタがあるんですが、それを生のズッキーニを細く切って作りました。野菜を主役にして、パスタのように食べてもらいたくて。味付けを変えながら夏場は毎年出していて、今年は蒸し鶏とバジルに合わせました。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

生ズッキーニを細く切って作った夏の定番メニュー「ズッペリーニ」。ズッキーニののど越しとバジルの香りがたまらない一皿。1760円(税込/2名様分)

おいしんぐ!編集部

——バジルの香りと食感が最高だと思います。では2皿目は?

「タコのグリルとンドゥイヤソースのリゾット」。これは1年目に出したらファンが増えすぎて、リクエストが多かったので復活して、定番メニューになったものです。タコは2度冷凍することで繊維をなくし、さらに弱火で煮てやわらかく仕上げています。

リゾットはお米と蓮根、大麦が入っています。味付けはブイヤベースのスープベースといわれるスープ・ド・ポワソンのダシに、非加熱のンドゥイヤソーセージを練り込んでいます。これはお客さんとも話していたんですけど、イタリアのンドゥイヤソーセージが発酵でできているものなので、日本人からすると醤油や味噌のニュアンスに近くて、旨味の感じ方がストライクなんじゃないかなと。

おいしんぐ!編集部
常連客からのリクエストにより復活し、定番メニュー入りを果たした「タコのグリルとンドゥイヤソースのリゾット」。2度冷凍してから弱火で煮ることでやわらかく仕上げたタコの食感と、ウドゥイヤソーセージを練り込んだソースがポイント。2860円(税込/2名様分)


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——なるほど、面白いですね。

3皿目が「木下牧場さんの近江牛」。ローストし、旬の野菜を合わせたものです。「木下牧場さん」とあえて言っているのには理由があります。ぼくは出身が滋賀県なので近江牛を使うことは決めていたんですけど、中でも木下牧場さんは、ぼくが大事にしている自然派ワインの考え方とつながるところがあったんですね。

彼らは「それぞれの牛を、それぞれのポテンシャルのまま、健康に育った状態で出荷したい」という考え方なんです。いわゆる「A5」みたいなランクに頼らず、A5を作るために牛を育てるようなことはしない。それこそサスティナブル、継続的に可能なものだし、その考え方にものすごく共感できたので、使うならここの肉しかないなと思いました。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

「木下牧場さんの近江牛」をローストし、旬の野菜を合わせた一品。牛一頭一頭の個性を大切に、自然で健康的に育てたいという生産者の思いが、おいしさに表れている。4500円(税込/2名様分)

おいしんぐ!編集部

——素晴らしいですね。食材の選び方はどのようにされていますか?

普段は豊洲市場に通って、なるべく旬のものを仕入れています。まだ契約農家さんをたくさん持ってはいないんですが、お店としては少しずつ増やしていこうと思っています。

近江牛については、部位をその都度変えて仕入れるようにしています。全国のいろんな飲食店さんがひとつのLINEアカウントを共有していて、肉の出荷の案内が出たときにみんなで部位の希望を出し合って、その都度ごとに回して使っているんですよ。そういう理由もあって、なるべく同じ部位ばかり取らないようにしているんです。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——布山さんはお客さんにも「今日の部位は◯◯です」とご説明していますよね。それを毎回楽しみにしている常連さんもいると思います。

「あのとき食べたあの部位が忘れられない」というお声もいただきますね。ただ、部位といっても何十ヶ所もありますし、牛の個性もあるので、毎回同じものをお出しすることができないのですが。

——そこも含めての楽しさなのでしょうね。ナチュラルワインのセレクトについてはいかがでしょうか?

フランスが中心ではありますけど、イタリアもありますし国にこだわってはいません。インポーターさんの案内があれば試飲会場に行って、自分の舌でおいしいなと思ったものを入れるようにしています。3年も経ったので、ワインを試飲しているとお客さんの顔が浮かびます。「このワインは、きっとあの人が好きだろうな」とか。何度も来ていただくと、好みがだんだんわかるので。

 

ワインを理解し、おいしさを管理することが大切。

おいしんぐ!編集部

——お店で大切にしていることを教えてください。

料理に関しては、温度感はけっこう気にしていますね。小さな店だしそんなに潤沢に器具があるわけじゃないんですけど、お皿や料理の温かさには気をつけながら、おいしい温度で食べてもらえるように意識しています。あとはやっぱり、お客さんに寄り添うこと。お客さんの食べるペースに合わせて出すようにしています。

お酒に関しては、ペアリングをやっていないぶん、なるべくグラスワインは多めに開けて、好みに合わせて楽しんでもらいたいなと思っています。そしてお店の雰囲気作りについては、社員の田中とアルバイトの方もいるので、その3人がいい雰囲気を出せることを大事にしてやっています。それが一番、お客さんの居心地につながるのかなと。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

布山さんの元で働き始めて1年半となる社員の田中さん。布山さんにとっても、ともに店の雰囲気を作り上げる大切な存在。

——これからやりたいことはありますか?

ワインバーをなるべく近くに作りたいなと思っています。パリに「セプティム」という星付きレストランがあって、そこは半径10m以内で3店舗を経営しているんです。「セプティム」の2軒隣りが「クラマト」というビストロで、そこは予約ではなく並んだ順に入っていけるスタイルで。並んでいるお客さんが暇だから、その人たちが飲めるように、斜め前にワインバーも経営しているんですよ。そういう感じで、このエリアで楽しい展開をしていけたらいいなと思っています。

——とても楽しみです。今後、ワインにも力を入れられるのでしょうか?

ぼく自身もまだまだ勉強が足りないと思っているので、ソムリエの資格を取りたいです。また、この9月末に店内を少し改装して、10月からはワインセラーを拡張する予定です。


おいしんぐ!編集部
おいしんぐ!編集部

——ワインの選び方にも変化がありそうですね。

最初の頃と比べると、すでにけっこう変わってきていると思います。通常のスティルワインとナチュラルワインって分けて考えられがちなんですけど、もともとはどちらもワインじゃないですか。うちはナチュラルワインオンリーで扱ってはいますけど、すごく変わった雰囲気のものや珍しいものもあれば、けっこう正統派に近いものもあります。だんだんと正統派のほうも自分の好みには寄ってきましたね。

ワインを出す以上、こちら側がコンディションも含めて「おいしい」というところを管理しないといけないと思っています。おいしいワインを広く理解し、選んでいくことが何より大事だなと。

 

では、最後に…。
布山さんにとって「おいしい」とは——?

おいしんぐ!編集部

めちゃくちゃ難しいですね。いや、でも難しくないのかな? 2つ悩んだんですけど、おいしいは「楽しい」だと思います。おいしいときに周りを見るとみんな楽しんでいるし、ぼくがおいしいものを味わっているときも楽しい。そしてできればお店の人にも楽しんでいてほしいです。

——ちなみに、もう1つは?

ほぼ同じ理由なんですけど、「幸せ」だと思います。楽しい仲間と飲んで食べて、おいしいなと感じたときには幸せだし、自分がおいしいものを食べて「幸せだなあ」と言っちゃいますから。

——この店に来たお客さんにはどういう気持ちになってほしいですか?

やっぱり「楽しい」がいいですね!

——「二日酔いになるまで飲んでほしい」ではなく?

いい意味で余韻は残してほしいかなと思いますね(笑)。

 
企画・構成/金沢大基 文/古俣千尋 写真/曽我 美芽

 

おいしんぐ!YouTubeチャンネルのインタビュー動画

おいしんぐ!のYouTubeチャンネルでは、布山純志さんのインタビュー動画を見ることができます。
お店の雰囲気や料理、布山純志さんが気になる方はチェックしてみてください。

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