100年以上続く、塩田からの歴史を知る

にがり生産量日本一の企業が経営する「Caféにがり衛門」で味わう、オリーブ車海老ランチ

この逸品
香川県
三豊市
WORD /
JR詫間駅
オリーブ車海老
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香川カフェ
香川グルメ
香川県三豊市
香川県西讃エリア
にがり生産量日本一の企業が経営する「Caféにがり衛門」で味わう、オリーブ車海老ランチ

おいしんぐ!編集部

“日本のウユニ塩湖”として、近年ますます熱い観光スポットとなっている、香川県三豊市の「父母ヶ浜」。その海岸線のすぐ近くに昔ながらの日本家屋がひっそりと建っている。この隠れ家的カフェが、2018年10月にオープンした「Caféにがり衛門」だ。

実はこのカフェ、にがり生産量日本一企業の仁尾興産が経営している。「元々うちは、塩田会社だったんですよ」そう教えてくれたのは、仁尾興産の高橋寛栄さん。昨年創業100周年を迎えた会社の歴史を伺うと、車海老養殖にも繋がるこの地の長い歴史と、日本食を支える貴重な事業の話を知ることができた。


内観 おいしんぐ!編集部
外観 おいしんぐ!編集部

以前は事務所として使われていたという店内。現在はリノベーションされ、広々とした居心地良い空間。大きな窓からは、昔のまま残されているという和風庭園の眺めも楽しめる

オリーブ車海老のエビフライが味わえる「Caféにがり衛門」

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地元の人々に親しまれるカフェの目玉は、オリーブ車海老を使ったランチメニュー。全国津々浦々の車海老のなかでも、唯一無二の独自性を持つオリーブ車海老は、「Caféにがり衛門」から小道を進んだ先の養殖場だけで収穫することができる貴重な生産物だ。身が引き締まり、旨みと甘みが高い数値を誇るオリーブ車海老は、市場やホテル、レストランでも高い評価を受けている。


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Aランチ(車海老フライ) 1,200円+税。セットについたお豆腐団子はもちもちの食感

大きな車海老が2尾鎮座するエビフライは、衣をたっぷりとまとってザクザク食感。オリーブ車海老のプリッとした歯応えと甘みが、口いっぱいに広がる。新鮮なオリーブ車海老を食べることができるという満足感は、この店でしか味わえない。


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「豆腐作り体験教室」と書かれた小さな扉。仁尾興産の「豆腐マイスター」である社員が、豆腐作りを教えつつ、にがりのこと、そして“塩田”のことを教えてくれる。

塩田で栄えた仁尾。その跡地で、車海老の養殖が始まった

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話は、車海老養殖が始まるより前、かつてここが広大な塩田地帯だったことまで遡る。

「仁尾」といえば基幹産業は塩田で、地元のほとんどの人は塩田に関わる仕事に就いていた。丸亀城を京極家が治めていた江戸時代当時、貴重かつ高価だった調味料の製造許可を正式に得た上で、京都と取引を行っていた仁尾は、それは栄えていた。

しかし転機を迎えたのが、昭和47年。もともと塩の製造は国主導のものだったが、より効率的で工業的な製造方法が開発され、塩田経営はもはや非効率的と、全国で塩業が廃止になる。これに伴い仁尾興産は、心機一転「にがりメーカー」に転業したのだ。

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その後、「残った塩田跡地が車海老養殖に適しているのではないか?」という話があがる。そこで高松市屋島で日本初の実地実験が成功したのを機に、そのノウハウを利用し、この地でも翌昭和48年から養殖業を開始。さらに沖縄など他の産地との差別化をはかるため、2015年からはオリーブの搾りかすを飼料とした「オリーブ車海老」の養殖が始まった…というわけだ。その際、車海老養殖は、100%子会社化した「仁尾産商」の事業とし、製造と水産で会社を分けた、という背景がある。


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店内には当時の塩田風景や、主流だった「入浜式塩田」の写真やパネルが。塩田の仕事について詳しく知ることができる。

では改めて、どうしてこの会社で、“にがり”作りが始まったのだろうか?

和食文化を支える、日本一のにがり生産量

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仁尾興産で作っている、固形化したにがり。豆腐屋さんは、これを水に溶かして使うのだそう。

そもそも苦汁(にがり)とは、海水から塩化ナトリウムを取り除いたときにできる液体のこと。仁尾興産では製塩事業で培った技術を活かし、「塩化マグネシウム」を生成。主な使用目的は、豆腐の凝固剤で、その他、身近なものに添加剤として利用されている。

「にがりを作っているのは、全国で主に2社。みなさんが普段食べているお豆腐は、もしかするとうちで作るにがりからできているかもしれません」と高橋さん。しかしにがりは高いものではないうえに、塩化物のためすぐ機械が錆びてしまい、工場生産にコストがかかる。そのため、本音を言えば儲からない。


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にがりや塩をはじめ、ショップコーナーに並んでいるのは、ほぼすべて自社商品!カフェ利用客はもちろん、ショップだけを目当てに買い物にやってくるお客さんも。

塩田事業をしていた周囲の会社は一様に撤退するなかで、「仁尾興産さん、にがり作りやってよ」という声に応え続け、ついにOEMで日本一を獲得。その頃からようやく、利益も出るようになっていった。


おいしんぐ!編集部
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創業者である塩田忠左衛門像。福沢諭吉の門下生で、葬儀の際に棺を担いだたった6人のうちのひとりだという。塩田は、“塩田王(えんでんおう)”とも呼ばれ、塩業業界を率いた人物。自分の資材を投げ打って、当時点在していた塩田を一挙に束ね、仁尾興産の塩田を創業したのだそう。そのおかげで「自分の土地を歩いて高松まで行ける」という逸話もあったという偉人だ。

今ではにがりの生産量日本一を誇る、仁尾興産。日本の食文化に豆腐が欠かせないのは、誰もが納得することだろう。そんな和食の一角を担う豆腐生産を、人知れず支えていたのが、この仁尾興産だったのだ。高橋さんはこう語る。「私たち三豊の人間は、海とともに生きてきました。そんなこの土地の歴史を、これからも未来に伝えていきたい。『Caféにがり衛門』には、そうした想いも込めています」

企画・構成/金沢大基 文/木口すず 写真/曽我美芽

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