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魚介類が持つ旨味、香り、脂の乗り、食感など、 「魚味」が最大化される時期こそが旬。 さらに、食べ物で季節を感じる事が出来るのは、日本料理・和食の大きな魅力! 旬を押さえて魚介類を食べると、 美味しいだけでなく食べる喜びがアップします。
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さて、唐突ではございますが、「白魚」これは何と読むでしょうか?
「シロウオ」と読まれた方もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、実は「シロウオ」は漢字で書くと「素魚」となり、「白魚」とは別の魚となります。「白魚」の正確な読み方は「シラウオ」。大変ややこしいですね…
魚の形状を見ると全然異なるので瞭然ですが、字面だけ見ると判りづらく、混乱を招いている気がします。しかも旬が同じで春(2月中旬~4月)というのも紛らわしい理由。
今回は、「シラウオとシロウオ」の違いについて書いてみたいと思います。
白魚(シラウオ)と素魚(シロウオ)の違い
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まず、種別を整理すると、白魚(シラウオ)はサケ目シラウオ科で、素魚(シロウオ)はスズキ目ハゼ科となります。このように姿を見れば全然違いますね。
白魚(シラウオ)は昔から江戸で愛されてきた魚。今では信じられませんが、昔は隅田川が澄んでおり、白魚の名産地だったそうです。歌舞伎の「三人吉三」で「月も朧に白魚の、篝もかすむ春の空」と歌われており、美しい情景描写だと感じさせます。
春の料理としても人気が高く、白魚を蕎麦に見立てた【白魚蕎麦切仕立】と言う珍しい料理も考案されました。また、鮨種としての歴史も古く、小鰭と並んで初期から用いられてきました。
白魚と素魚の産地
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現在の産地としては茨城県・霞ヶ浦と島根県・宍道湖が有名で、「宍道湖七珍」の一つにカウントされております。一方で素魚(シロウオ)は、主な産地は宮城県・南三陸町、愛媛県・宇和島、福岡県・室見川など。ともに全国に広く分布しておりますが、珍重されるエリアはそこまで広くない印象です。
素魚については、福岡県博多における【素魚の踊り食い】が有名ですね。ちなみに、「踊り食い」は何でも食べそうなイメージを持たれている中国人には大不評で、「残酷」、「気持ち悪い」などと言われているそうです(笑)
食文化と言うものは面白いもので、自国の文化のみで判断する事は出ないものですね…。なお、素魚については環境省の絶滅危惧種に指定されているため、今後注意が必要な魚となります。
旬以外に共通して言える事は、寿命が1年しか無い点と、産卵後に死んでしまう点が挙げられます。そして、同じ調理法が多い点も特徴であり、ややこしくしている理由かもしれません。
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主な産地(素魚):宮城県・南三陸町、愛媛県・宇和島、福岡県・室見川
主な食べ方:刺身、軍艦巻き(鮨)、椀、酢の物、卵とじ、煮もの、天婦羅、かき揚げ、醤油漬け、塩辛、佃煮
主な栄養素(白魚):タンパク質、カリウム、リン、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、ビタミンA(レチノール)
変わった料理のご紹介
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【白魚蕎麦切仕立】
軽く煮上げた白魚に、細切りにした大根を混ぜ、蕎麦ツユをかけ、薬味をまぶす。
【白魚飯】
強めの出汁で煮た白魚を炊きたてのご飯に乗せて、ツユをかけて蒸らす。
いかがでしたでしょうか…。
白魚(シラウオ)と素魚(シロウオ)の違いをご理解いただけましたでしょうか? 旬の白魚と素魚をぜひ食べ比べてみて下さい。