飯田将太さん × タベアルキスト 山内康晴

「日本のラーメンを、麺類の世界一に。」飯田商店・飯田将太さん <後編>

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「日本のラーメンを、麺類の世界一に。」飯田商店・飯田将太さん <後編>

おいしんぐ!編集部
年間570食以上ラーメンを食べ続けているタベアルキスト・山内氏。これまで20数年にわたり古今東西のラーメン屋を巡ってきた彼が、往復3時間をかけて毎週のように通うラーメン屋があるという。それが神奈川県・湯河原にある『飯田商店』。 なぜ、これほどまでに通い続けるのか。

そして、『飯田商店』の店主・飯田将太さん。彼はどんなことを考えて、どのようにラーメンと向き合っているのか。今回、山内氏と編集部による取材が実現した。


前編はこちら

後編では、「人との出会い」、「未来のラーメン界のために」をお届けします。

※記事内メニューは2019年5月26日までで現在はメニュー変更されています。

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人との出会いを「おいしい」につなげて

おいしんぐ!編集部
一切の妥協をせず麺と向き合い続ける「飯田商店」の店主、飯田将太さん(左)。そして、飯田さんの作り出すラーメンの魅力にとりつかれ、毎週のように通うタベアルキスト山内氏(右)

山内: 飯田さんは、よく醤油蔵へ醤油を見に行かれていますし、今年もモンゴルへかんすい(※)を見に行っていましたよね。なかなかラーメン屋さんで、モンゴルまで行かれている方はいないと思うんです。

(※)麺の製造に使うアルカリ炭酸ソーダ。

飯田: ぼくは、自分が使わせていただいている食材を見ていないっていうのは、あんまりよくないなと思っているんですね。だから「自分のラーメン」を知るために、見に行くようにしています。ぼくもまだまだ、わかっていないことだらけですし。


おいしんぐ!編集部

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山内: ラーメンの世界は、本当に深いんですね。

飯田: 深いです。そして、もうひとつの理由として、新しいものを探したいということもあります。ただ、何年か前にわかったことがあるんですが…。新しいものって、いっぱいありすぎるんですよね。だから「出会い」が大事だなって。

編集部: 出会い、ですか。

飯田: そのときに出会った人、たまたま話した人との出会い。そこでその人のことを好きになっちゃったら、その人の作ったものを使いたい。ぼくは基本的にそういう感じですね。

編集部: なるほど。

飯田: もちろん、先輩からの紹介で仕入れ先を決めることもありますが、そのつながりも、ぼくを構成しているものですし。今、モンゴルからかんすいを電話一本で買えるのも、佐野さんがいてくれたおかげだし、ぼくたちは先人や先輩が作り上げてきたなかで生きているんです。

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山内: いま、製麺に使っている塩は、沖縄塩「ぬちまーす」だけですか?

飯田: そうですね。これは、仙台の五福星の早坂さんに教えてもらって使い始めたんですが、実際やってみて、子どもたちの食いつきが違うんですよね。この塩だったらなんでもおいしそうに食べるんですよ。だからこれは、本物なんだなって。またほかの塩を試すかもしれませんが、今のところはこれですね。

山内: そういった飯田さんの探究心と、それにともなう味の変化が楽しみで、毎週通うようになってしまいました(笑)。

飯田: ありがとうございます。ぼくもまだまだですけど、がんばらなきゃって思います。山内さんをはじめ、通ってくれるみなさんは本当にラーメン愛があふれているんですよ。

スタッフのこともかわいがってくれるし、ラーメンの変化も見てくれている。大きな視野で見守ってくれているというか…。ぼく、1日2杯しか売れなかった時代もあったんですけど、そういうときに食べに来てくれて、広めてくれた人がいたからこそ、今があると思っています。

 

未来のラーメン界のために


おいしんぐ!編集部

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編集部: ラーメンを作るには、時間も手間もかかっています。それなのに、一般的な麺のなかでは値段が安い。パスタは1食1200円ぐらいするのに、ラーメンが同じ値段では高いと思われる…。作り手の方々が、大変だと思うんです。

飯田: 価格帯ももちろんそうですし、それに加えて原価率も高いです。ラーメン屋になりたいと思う若い人も、これでは増えないですよね。正々堂々とまじめに、いい食材たくさん使って、原価をしっかりかけたとしても、ある程度の値段がとれれば、ふつうにやっていけるはずなんですが…。そういう苦しみは、ラーメンをやっている人は、みんなあると思います。ぼくだって、今でこそやっていけていますが、ちょっと前までは本当に悲惨でしたから。

編集部: 食べる側も、手間をかけて丁寧に作られているラーメンの価値をちゃんとわかっていかないといけませんよね。

飯田: そう言っていただけるのはありがたいですが、まだまだ我々の努力不足もあります。この先、ラーメン屋さんの価格帯が世の認識としてひとつ、ふたつと上がることで、変わってくれればいいなって思います。それは1年や2年では無理ですから、長い時間をかけて少しずつ変わっていけるように…ぼくはその歯車になれればいいと思っています。将来、ちゃんと原価をかけて、おいしいラーメンを作る人がたくさん出てきてくれたらと。

では、最後に…。
飯田さんにとって、 「おいしい」とは何でしょうか―—?

「お客さんもお店の人が好き。お店の人もお客さんが好き」っていう「瞬間的な両思い」があった上で成立するもの…なんじゃないでしょうか。ぼくはいつも、初めての人に「いらっしゃいませ」っていうときって「ちょっとだけ相手を好きになろう」っていう努力を心のどこかでしているんです。そういう瞬間的な両思いになれば、じつは食べる前にもう「おいしい」んだと思います。

おいしんぐ!編集部

お店の外観と製麺室

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店先では朝7時から整理券を配布しており、最後の客が店内に入れるのは夕方になる。

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店の奥にあるのは、なんと製麺室。ここで日々、飯田さんはよりおいしい麺を求めて研究を重ねている。壁には、飯田さんが尊敬してやまない『支那そばや』の佐野実氏の写真が飾られている。

※お店の情報は記事投稿日時点のものです。訪れる際には予め営業日時をお店にご確認ください。

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