人とは違うやり方で見つけた自分の居場所

デジタルとアナログをミックスして「おいしい」を追求する実験室。「INACASA」オーナーシェフ・稲崎匡彦さん

関東・甲信
インタビュー
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おいしんぐ!編集部

白い壁、青い扉――その佇まいが、太陽がさんさんと降り注ぐ地中海の街並みを思わせる、横浜のイタリアンレストラン「INACASA(イナカーザ)」。しかし店内に足を踏み入れれば一転、ダークグレーの壁やテーブルが備えられた、モダンでシックな空間が出現する。

整然としたカウンターテーブルに、見たこともない調理器具が設置されたキッチン。レストランというよりは、まるでなにかの実験が行われる地下室、あるいは洞窟か……? 暗い室内の中、スポットライトで照らされたテーブルはまるで舞台のよう。ここでどんな料理が繰り出されるのか、期待がますます高まる。

厳かな雰囲気の店構えだけに、シェフもきっとクールで無口に違いない。そんな印象をいい意味で裏切ってくれるのが、オーナーシェフの稲崎匡彦さんと、ワインのインポーターで働いていた経験を持つ奥様のかおりさん。ふたりとも気さくでにこやか、温かな人柄だ。そのギャップにもまた心を掴まれてしまう。

メニューは昼夜ともにコースのみの完全予約制。稲崎さんの作り出す独創的かつ味わい深い料理の数々に驚かされ、楽しまされ続ける3時間だ。素材の旨みを最大限に活かすために使う調理マシンの「デジタル」な部分と、手をかけ時間をかけてひと皿ひと皿をじっくり仕上げる「アナログ」な部分をミックスしながら、おいしさを追求しているという。

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2017年末に開店して3年。食通たちの間では、すっかり横浜の名店として知られるようになった。どのようにしてこの店が生まれたのか、そしていまどんな思いで料理を作っているのか。稲崎さんにじっくりと語っていただいた。

内観 おいしんぐ!編集部
グレーに統一された、クールでスタイリッシュな店内。「“穴ぐら“っぽい雰囲気を出したかったんです」と稲崎さん。


外観 おいしんぐ!編集部
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横浜駅東口からタクシーで約5分。白壁に青色のドアが映える外観が目印。

 

「みんなとは違うやり方」をするため、チーズ工場へ

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東京、横浜、イタリアで積んださまざまな経験を昇華させ、独自の料理と空間を作り出したオーナーシェフの稲崎匡彦さん。

——まず、料理人を志したきっかけから教えてください。

稲崎:中学生ぐらいからですね。ぼくは4人兄弟の長男だったんですけど、部活なんかをしているとお腹がすくじゃないですか。それでよく、冷ご飯と卵と肉とネギでチャーハンを作っていました。同じ材料でも入れるタイミングを変えたり、調味料や作り方を変えると何通りもの味ができるから、料理っておもしろいなって漠然と思っていたんです。


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コンベクションオーブンや減圧調理器など、珍しいマシンやピカピカと輝く調理器具が並ぶキッチンスペース。奥には火が赤々と燃える大きな薪ストーブも。

——中学生のとき、すでにいろいろ工夫をされていたんですね。

稲崎:その頃テレビ番組の『料理の鉄人』が人気だったので、シェフってカッコいいなと憧れもありました。高校は料理科ではなく普通の商業高校に進んだのですが、卒業後は調理師免許を取りたくて、横浜の調理師専門学校に行きました。そこの学校の先生のつながりで、鶴見にあるイタリア料理の店に入ったのが最初ですね。

——なぜイタリア料理を選んだのでしょう?

稲崎:ぼくはサッカー部だったんですが、当時はJリーグが始まった頃で、サッカーといえばイタリアがうまいし、セリエAが強い時代で。イタリアって日本と形や風土も似ているし、食の文化もあるから、なんとなく「料理をやるならイタリアがカッコよさそうだな」と。そんな安易な感じでしたよ(笑)。


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ディッシュウォーマーを使って50度で2時間ほど低温調理してからコンベクションオーブンでさらに熱を加え、最後に薪ストーブで表面に焼き色をつけて仕上げる。

——最初のお店ではどんな経験を?

稲崎:街場のイタリアンではありましたが、シェフがフレンチ出身で、基礎的なことをしっかり学べましたね。最終的にはスーシェフとしてメニューを考えるのも任せてもらいました。働きながらもずっとイタリアに行ってみたいと思っていたので、少しずつお金も貯めて、24歳のときに辞めてイタリアに行きました。

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——どの辺りに行かれたのですか?

稲崎:トスカーナのヴォルテッラという街にある、アグリトゥーリズモ(農泊)のチーズ工場で「Fattoria Lischeto」という所です。「仕事を手伝う代わりに宿泊と飲食をさせてもらえませんか?」と直談判して、研修生として入れてもらいました。

羊のミルクを絞ってチーズを作ったり、ホエーを芝生にまいて羊に食べさせたり、といったチーズ作りのサポートです。チーズを作る工程でどういう副産物ができるのかなども含め、チーズについてのさまざまな知識も得られました。月曜から金曜の朝9時から5時まで、丸々3ヶ月です。

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盛り付けの際などに、エプロンに入ったピンセットが活躍する。

——飲食店ではなくチーズ生産者のところへ行ったというのが、稲崎さんの個性ですね。

稲崎:当時はインターネットがやっと普及しだした頃で、自分自身がレストランで働かなくても、経験した人から情報を手に入れることができるようになっていたんです。だからこそ自分は、みんなとは違うやり方をしよう、と。

それにチーズって、イタリア料理ではよく使う材料ですよね。だからどういう風土や環境から生まれて、どんな過程を経てできているかを、自分の目で見ておきたかったんです。発酵食品として日本には味噌や漬物があるけれど、ヨーロッパにはそれがない。だからこそヨーロッパではチーズを食べる文化が深く根づいている。そうしたカルチャーの違いなども、行ってみて直に触れたからこそ理解や実感ができたと思います。


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宮崎県産尾崎牛の熾火焼き。宮崎県の生産者・尾崎さんが育てた良質な牛のイチボは脂がサラサラとしていて、しつこさがないのが特徴。付け合せは静岡産ハニーキャベツと北海道産インカのめざめ。

 

酷な環境も、いつか必ず自分の身になる

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——その後はどうされたんですか?

稲崎:帰国して東京で働きました。自分の技術に自信がなかったわけではないけれど、今のうちにあえて辛い経験を積んでおこうと思って、まずは街場のイタリアン、その後は有名店で職を探しました。

あるとき、行きたいと思っていた店の面接を兼ねて食事をしたのが、西麻布の「ダルマット」という店でした。たしか夜中の12時ぐらいだったと思いますが、ものすごく活気があって。ぼくは面接を受ける店よりも、とにかくその場に出てきた料理と空間に衝撃を受けてしまったんです。

その後すぐ「ダルマット」が恵比寿に2店目をオープンするという話をいただき、入れてもらえることになりました。それが26歳のときで、1年後には西麻布本店のシェフを任せてもらいました。


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カウンター席のほか、4名で利用できる個室もある。

——人気店ですし、かなり厳しい経験もされたのではないでしょうか。

稲崎:深夜でも満席で、朝4時までフル回転という忙しい店でした。とにかく回転が早くて、ここでの1年は普通のお店の3年に匹敵すると言われていましたから。前菜、メイン、パスタまで全部作るし、数も通常の3倍ぐらいをこなすので、テクニックがどんどん向上していくんです。酷ではありましたけど、キャリア的には絶対に自分の身になるなと思いました。そこでは6年半以上働きましたね。

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料理はコースのみで、前日までの完全予約制。ランチ6000円(料理のみ)、9500円(ドリンクペアリング)、ディナー・テイスティングコース9500円(料理のみ)、13000円(ドリンクペアリング)、ディナー・シェフのおまかせコース13000円(料理のみ)、19000円(ドリンクペアリング)。ペアリングのドリンクは中国茶などのノンアルコールも選べる。※すべて税抜価格

——6年半ということは、実質は20年近くの経験値ですよね。

稲崎:そうですね。忙しい店だからこそ食材も早く回転していて、常にいいものがお客さんに届く。このスタイルはすごいなと思いました。また、オーナーシェフがちょうど30歳でお店を出したと言っていたので、ぼくも30歳で店を持ちたいと具体的に考えるようになりました。それまでに何をやらなければならないか、逆算して一つ一つ課題をクリアしていこうと。

 

魚料理の幅が広がった、2度目のイタリア研修

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——苦労された分、得たものもたくさんあったのですね。

稲崎:6年半働いて辞めてから、もう一度イタリアへ行くことにしたんです。いまの現状やトレンドを感じたかったのと、少しリセットもしたくて。食べ歩きとワイナリー巡りを中心に、以前お世話になったところに行ったり、前回は行けなかった南のほうをレンタカーで回ったりしました。市場で食材を買って、B&Bで料理もしましたね。

——2度目のイタリアで、得たものはなにかありましたか?

稲崎:旅の後半でマルケ州にある魚料理専門店に、ブロデット・ディ・ペッシェというブイヤベースのイタリア版のような郷土料理を食べに行ったんです。そこのオーナーシェフが親日家で、すごくよくしてくれた上に「うちで働かないか?」と声をかけてくれて。ぼくもまた「食べるところと寝るところを用意してくれるならいいよ」と交渉して、最後の1ヶ月はそこで料理をすることにしました。


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——魚料理の専門店とは、またおもしろい経験ができそうですね。

稲崎:ヒラメをまるまる一尾オーブンに入れちゃったり、生で入荷したシャコでパスタを作ったり、アンコウの胃袋をアラビアータ風トリッパにしたり。とにかくいろんな魚に触れられましたし、同じ魚でも日本とはアプローチが違ったりして、おもしろかったですよ。

——そして帰国後はいよいよ、ご自分のお店を?

稲崎:いえ、まだなんです(笑)。実家を改装して1階を店にする計画を進め始めてはいたのですが、長男が生まれたこともあってまずは働かなければと。ちょうど「ダルマット」時代のお客様がイタリア郷土料理のお店を出したいということで声をかけてもらいまして、表参道の「ラ・キアーラ」で2年間エグゼクティブシェフを務めました。

そこではぼくの好き勝手にやっていいということだったので、お店の仕立てから何からやらせてもらいました。それまでに学んだイタリアンの技術も思い切りアウトプットすることもできて、いい環境でしたね。その後、今度は長女が生まれるタイミングと重なったこともあって、横浜の「カンブーザ」で2年間働きました。


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ガストロバックしたボタンエビのトマトソース・ピチ。手打ちをしたパスタ「ピチ」はモチモチとした食感で、ソースによくからむ。

——「カンブーザ」さんも、横浜で人気の高いお店ですよね。

稲崎:はい。ここからも歩いていけるし、やっぱりすごく繁盛している店なので、横浜で成功するヒントが得られるんじゃないかなと。またぼく自身がサービスの勉強もしておきたかったので、「カンブーザ」ではシェフとしてよりも、サービスマンの仕事をメインに入らせてもらっていましたね。

——独立への準備を着々と進めていったのですね。

稲崎:妻がもともとワインインポーターの仕事をしていたので、彼女にサービスをやってもらって、ぼくが料理をやって……とこの場所を使って2人だけでやるお店にしようとは決めていました。1人ですべての料理を作るオペレーションを考える上では「cainoya(カイノヤ)」の塩澤隆由さんにいろいろなアドバイスをいただきました。


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トマトソースは、減圧調理器を使って海老のむき身の中に殻やエキスなどの旨味をたっぷりと注入。ぎゅっと旨味が閉じ込められた海老にトマトの酸味やバジルのペーストの爽やかさが加わり、複雑味と奥深い余韻を楽しめる味に仕上がっている。

——鹿児島のイタリアンの名店として知られ、現在は京都に移った「CAINOYA(カイノヤ)」さんですね!? たしかに、お店の雰囲気もどこか通じるものを感じます。

稲崎:たった1人でとんでもない料理をやっているお店だと、最初は雑誌の記事で知ったんです。実際に食べに行ったら、やっぱりすごくて。ガス台とオーブンをメインに使う通常のオペレーションとはまったく違い、ぼくがやりたいスタイルに近いなと思いました。それで「カンブーザ」を辞めた後で1週間、鹿児島のお店で研修もさせてもらい、すごくいい経験になりました。

 

一人仕事をカバーする、ハイテク調理器の数々

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——そして2017年12月に、ご実家の1階で「INACASA」を開店。ところでこの店名はどこから来ているのですか?

稲崎:「CASA」はイタリア語で家という意味なのですが、南イタリアの方に、第二次大戦後に作られた国営の団地があって、その総称が「INACASA」と呼ばれているんですね。その団地の表札には太陽のマークが描かれていて、言葉もなんだか印象に残ったんです。稲崎という名前ともリンクするし、ここは自分の家でもあるし、この店名にしたらおもしろいなと。たまに「田舎だから?」とよく言われるんですが、実は違うんです(笑)。

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——稲崎さんの服やお店全体の色にも、統一感があって素敵です。

稲崎:僕自身が青が好きなのと、海のある横浜だったり、地中海を連想する青ということで、エントランスのドアを青、壁を白にしました。室内の壁やカウンターは、黒だと雰囲気がギラギラしすぎてしまうので、少しやわらかく、石の色のようなグレーを基調にしました。洞窟に吸い込まれていくようなイメージになったらいいなあと。


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クロークと引き出しには目印としてサンジョヴェーゼ、モンテプルチアーノなどのブドウ品種名がつけられている。


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7名が座れるカウンター席には一人分ずつ引き出しがついており、中にはカトラリーが収められている。

——壁のクロークや、カトラリーの入ったテーブルの引き出しなど、機能性もありつつ見た目のデザインもすばらしいですよね。このあたりもご自身で考えたのですか?

稲崎:ぼくや妻がこれまでに見てきたもの、働いてきた経験をもとに自分たちでも調べながら、施工業者さんとすり合わせて改装をしました。席の後ろにあるクロークは、妻のアイデアです。引き出しは、ぼくが実際に訪れた店でいいなあと思った体験から、うちではどういうアプローチができるかを考えて、このかたちにしました。


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——キッチン内にある調理器具について教えてください。

稲崎:これらはすべて「一人でいかに効率よくおいしいものが作れるか」というところから揃えたものです。カイノヤの塩澤さんにも「これは持っておいたほうがいいよ」と、いろいろ教えていただきました。まず、真ん中にある大きなマシンは、ドイツ製のスチームコンベクションオーブンです。低温調理をするときに使うのですが、できあがるとファンファーレが鳴るんですよ。

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——さきほどから楽しい音が聞こえてきていたのは、これだったんですね。

稲崎:そして、こちらが減圧調理器です。たとえばエビをむいたときの殻やエキスなどを、浸透圧を使って、エビの身の中に注入することができます。旨味をぎゅっと閉じ込めることができるので、使う塩の量も減らせるというメリットもあります。また魚介の殻や野菜の皮などを捨てることなく、旨味のエッセンスとして再度活用することができるんです。

——無駄なくおいしい料理が作れるのですね。

稲崎:ショックフリーザー(急速冷却器)もよく使います。肉などをマイナス40度で一気に凍らせることができるので、食材のロスが出ません。通常、一人でやろうとすると質が落ちてしまうところを、これらの機械が全部カバーしてくれている感じですね。だからこそ、よりいいものを作ることができるんです。

 

デジタルとアナログをミックスさせた店に

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——稲崎さんの料理では、薪ストーブも活躍していますね。

稲崎:イタリア修行時代に同僚たちと飲みながら、薪ストーブで焼いて食べたサルシッチャの串刺しやパンが、本当においしかったんです。その思い出が強くて、自分の店でも薪ストーブを使おうと、ずっと思っていました。炭火のようなスモーク臭がつかず、ほのかな生の木の香りがするのもいいんですよ。


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——使っている薪は、どんなものですか?

稲崎:イタリア製の少し特殊なもので、家具の端材を一度粉砕してから圧縮して固めているんです。乾燥しているので保存もきき、天然の木よりも衛生的かつ均一でクオリティが高いんです。毎日1本~1本半ぐらいを、料理に合わせて少しずつ割りながら使っていきます。


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開店したときから出し続け、徐々にバージョンアップしてきたという定番デザート「ティラミス ver.4」。コースの最後に出す皿として、重さが出て食べ飽きることがないよう、マスカルポーネクリームはエスプーマを使ってムース状に。

——お店の作りは洞窟や実験室を思わせるクールな雰囲気なのに、薪ストーブの温もりがあったり、稲崎さんご夫婦のお人柄が温かかったりと、どこかギャップを感じるのも魅力ですね。

稲崎:ありがとうございます。デジタルがありつつアナログの温かみがある、というのは店作りで大切にしていましたね。うまく混合しながら、自分の持っているエッセンスを加えて、料理を楽しんでもらいたいなと思っていたので。

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通常はスポンジを使う生地部分もエスプレッソとココアパウダーを混ぜたビスキュイショコラにすることで軽やかに。ふわふわのエスプーマと、カリカリとしたビスケットの食感のコントラストも楽しい。

——今後の展開については、どのようにお考えですか?

稲崎:この場所で、この規模で、妻と2人でやるというスタイルは変えるつもりはありません。いまのお客様からは「横浜にないジャンルだよね」といっていただけているので、ぼくたちからももっと発信して、わざわざ東京や県外からももっと通っていただけるような店にしたいです。

コロナ渦でサービス業のあり方が変わってきているので、外に出づらい状況のなかでも楽しんでもらえるようなことは、少しずつでも発信していきたいですね。いま、お茶菓子として出しているフィナンシェをECサイトで売るなど少しずつチャレンジもしています。

それとペアリングをもっと強化していきたいです。特にうちの現在のノンアルコールペアリングは市場にあまり出回らないお茶のペアリングですが、妻が「あなたの料理は薬膳だ」と言いはじめたことがきっかけで、いま薬膳ドリンクを学んでいます。2022年までには大きく強化できる予定です。

 

では、最後に…。
稲崎さんにとって、「おいしい」とは何でしょうか——?

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稲崎:たとえなにも説明をしなかったとしても、ひと口たべて「すごくうまい!」と笑顔になってもらえること。それが「おいしい」の表れなんじゃないかなと思います。食べた人が笑顔になってくれればぼくも報われるし、きっと牛肉だってエビだって、余すことなく使われておいしく食べてもらえればハッピーなんじゃないかなと(笑)。

お肉も魚も野菜も生きているわけで、丹精をこめて作られた命をいただいているからこそ、自分を介して最高に「おいしい」というかたちにして届けていきたいと思っています。そして、食べたお客さんが幸せな気持ちになってくれるのが一番ですね。

企画・構成/金沢大基 文/古俣千尋 写真/倉橋マキ

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