青森をこよなく愛し、青森の食材にこだわる

「青森の食材を自然そのままに」津軽割烹未来 吉川未来さん

東北
紀行
WORD /
JR奥羽本線
料理人インタビュー
日本料理
青森駅

おいしんぐ!編集部
青森市内に食通を唸らせる凄腕の料理人がいる。青森県(津軽)産の厳選食材を扱い、しかも独自のルートで調達。

一般的にはあまり知られていないが、青森県は食料自給率120%を誇る全国トップクラスの県。食材の宝庫である青森県の食材を吟味し、独自の調理法で他県から人を引きつける料理人こそ、「吉川未来」だ。

「津軽割烹未来」のWebサイトには「養殖魚、化学調味料、冷凍食品、既製品、輸入食材などは一切使用しておりません」と掲げており、青森県民でも知られざる青森食材に出合えるお店。

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青森県産の食材にこだわる料理人


おいしんぐ!編集部
使用する食材の大半は生産者が少量生産で作っている貴重なものばかり。そして、食材のみならず調味料も出来る限り津軽産。出汁を引く昆布まで津軽海峡産であり、他店並びに他県では決して味わい得ない料理に仕上げていて、津軽塗の漆器を用いるなど、抜かり無い。


おいしんぐ!編集部
「20歳前半の頃は、ジャンルを超えた創作料理を作ろうと思っていた」と語る、吉川さん。

しかし、次第に限り無くシンプルな料理を求めるようになり、今のスタイルに至ったようだ。料理は装飾が排除されており、一つ一つの存在感が強い。昨今の日本料理のような「華美」は無いので、人によっては肩透かしを食らうかもしれない。

料理を口にすると、驚きに変わる。「素材を活かす」という行為は、正に言うは易く行うは難し。素材が上質であればあるほど、料理として仕上げるためには食材を識り、手を掛けなければ、素材は活きない。味覚や素材の「足し算」を行うのではなく、「引き算」を行うためには料理人のセンスを要する次第だ。

故に、御料理の佇まいは朴訥としているところがあるが、むしろいただいた際の意外性が大きく、食材と料理を愛する人間であれば、また異なる季節に伺いたい…と魅了される。青森広しといえども、食の変態向けの一軒である事は間違いない。
  

きめ細かいコース料理で青森の季節を存分に楽しむ


おいしんぐ!編集部

今回いただいたコースは、夜の16,000円コースと日本酒のペアリング。

日本酒のペアリング

ちなみに、こちらは日本酒のラインナップも凄い。日本酒フリークの方も満足する品揃えだろう。


鳴海醸造店・稲村屋No.35純米吟醸生原酒 おいしんぐ!編集部


西田酒造店・田酒 古城乃錦 純米吟醸 おいしんぐ!編集部

八戸酒造・陸奥八仙No.49純米大吟醸仕込米非公開おいしんぐ!編集部

コース料理


八寸おいしんぐ!編集部
(手前から時計回りに)鯵ヶ沢の甘鯛の焼きもの、湯上がり娘の豆豆和え、西津軽郡深浦町・久六島のサザエ、イクラ(初物なので、これのみ北海道産)、岩木山麓しらとり農場のピーマンの焼きもの。

ピーマンは届いた瞬間に香りが良く、甘みがしっかりで驚き、軽やかな苦みが軽やかに引き締める。皮が柔らかい点も印象的。岩木山麓しらとり農場は在来種の栽培にこだわる自然農法の農場だ。甘鯛は皮下に潜む脂がねっちりと舌に絡み、身はホロホロ。


湯上がり娘の豆豆和え おいしんぐ!編集部
豆豆和えはシンプルだが実に良い。豆を豆が覆い湯上り娘の印象が強まる調理法である。

サザエ おいしんぐ!編集部
サザエは柔らかさとサザエらしいコリコリ感が同居しており、噛み締めるのが気持ち良い。


お造り:ヒラメ、真鯛、オクラ、フルティカトマトおいしんぐ!編集部
ヒラメは訪問時期(8月末)でも旨味が強く、香りもワイルドで驚いた。聞けば、青森のヒラメは「5月が一番美味しい」との談。一般的には晩秋から冬にかけて旬とされるので、未来さんが自負する5月のヒラメもいただいてみたいところだ。

真鯛は旨味がじんわり広がり、酸味が印象的であった。オクラはえぐみが全く無く、瑞々しい。トマトはその名の通り甘みが清々しい。


ウニと温泉卵おいしんぐ!編集部
大間のバフンウニと蓬田村・坂本養鶏の温泉卵。写真と文章から、主役はウニだと思うだろうが、然に非ず。

本当の主役は卵! 黄身が超濃密で旨味が強い。卵、ウニともに強い味わいだが、出汁を効かせたジュレが味を繋ぐ。坂本養鶏の鶏は津軽米を食べて卵を生んでいるそう。グルメ鶏のグルメ卵だ。


三厩の本マス おいしんぐ!編集部
何と本マスは5キロの巨体。麹に漬けて焼いている。食欲をそそる香りが立ち、脂の乗りが抜群。しかし、マスらしい上品な脂なので、しみじみと旨い…と感じながら酒が進む。
  

記憶に強く残った2種類の椀物


椀:いちご煮おいしんぐ!編集部
青森、八戸~三沢エリアの郷土料理【いちご煮】。知らなければ少々ギョッとする料理名だが、ウニとアワビの潮汁となり、暑い吸い地に浮かぶウニが野イチゴに似ている事から名付けられた。

しかし、未来さんの【いちご煮】は圧倒的な存在感を放つ郷土料理の再解釈料理。初手から度肝を抜かれた。世に知られる【いちご煮】とは全く異なる(笑)

ウニは巨大で、アワビ(蝦夷アワビ)も肉厚。力強い食材を組み合わせているが、出汁が強く、強烈な個性を連結している。出汁には鮑の煮汁以外に青森らしい焼き干しも加えている。

これは一度頂いたら忘れられない料理である。


小椀仕立ての野菜の炊合せ おいしんぐ!編集部
しらとり農場さんのトウモロコシ、自家栽培のミョウガ、インゲン。インゲンはキュキュキュッと軽妙な音を奏でる。

トウモロコシもシャキシャキした食感で、甘みが溢れ出てくる。やや強めながらに野菜を活かすイリコ出汁が秀逸。いうまでも無く椀や煮ものの見どころは出汁。一見すると地味かもしれない。「高級店で野菜だけ?」と思う人もいるかもしれない。

しかし、出汁や素材の組み合わせ、一体感に着目すると、高度な仕事が浮き彫りになり一気に面白くなるものだ。
  

最後の一品まで青森愛を感じされる料理の数々


平川市のそばもやし おいしんぐ!編集部
蕎麦の実を発芽させた津軽の伝統野菜。生産者が激減し、絶滅の危機に陥っていたそうだが、企業努力により復活したそう。いただいてみると一般的なもやしは勿論、同じく青森の大鰐温泉もやしよりも繊維質が繊細。


揚げもの:津軽海峡のカサゴ おいしんぐ!編集部
カサゴはゼラチン質に富み、ぷりぷりと反発した後にしっとりとほどけてゆく。舌に残るのは旨味。これもまた餡の出汁や塩気の塩梅が絶妙であった。

五戸町あおもり倉石牛の焼きもの おいしんぐ!編集部
まず先に脂が広がるが、赤身の酸味も追いかけてくる為、ダレない。黒毛和種でありながらもたれない味わいだ。付け合せの唐辛子は実に甘く、歯切れが良く、香りも楽しませてくれる。


手打ち蕎麦 おいしんぐ!編集部
独学で体得された蕎麦は十・一で打つ。香りを楽しませるため薬味は敢えて付けないと言う硬派な蕎麦。細打ちで瑞々しく、お酒を頂いた後に嬉しい蕎麦である。


水羊羹 おいしんぐ!編集部
しらとり農場の花嫁小豆を用いた水羊羹。一瞬にして小豆の旨味と風味が広がり、消える。あたかも絹衣のような軽やかさ…驚くべき味わいの水羊羹。何と、醤油も少量用いているそうだ。

桃の「とも和え」 おいしんぐ!編集部
川中島白桃、黄金桃、ネクタリンの三種を使用。切りつけたものと、三種をミキサーに掛けたものを合わせる贅沢な水菓子。これは初めて頂く感動的な味わいの桃スイーツだった。

丁寧にひかれた出汁や一品一品の素材や調理にかける細心の注意とこだわりは見事なもの。気取らぬ接客も心地よく、一流の味を寛いで味わえるのもいい。

「身近な食材をシンプルに。包丁と調味料の数を減らして調理する。」青森食材とまっすぐに向き合ったごまかしのない直球勝負の美味が津軽割烹未来にはあった。

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