日本で味わうイタリアの食卓 Vol.3〜アブルッツォ州〜

日本で唯一!アブルッツォ郷土料理を味わえる一軒「トラットリア ダイ パエサーニ」

東京
この逸品
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アブルッツォ料理
イタリア料理
副都心線
東京イタリア料理
西早稲田駅

著者撮影

タベアルキスト・権 恩実(Eunsil Kwon)による、イタリア各州の食文化や魅力。そして、その州の郷土料理が味わえる面白いレストラン、マニアックなレストランなどを紹介しているコラム「日本で味わうイタリアの食卓」。前回はプーリア郷土料理について紹介しました。

そして今回は、イタリア中部に位置する「アブルッツォ州」にフォーカスします。

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イタリア中部に位置するアブルッツォ州

今回は南イタリアから少し北に移動し、中部イタリアを紹介したいと思います。中部イタリアというと、まずワインの銘醸地であるトスカーナ州や首都ローマがあるラツィオ州を思い浮かぶことが多いと思いますが、あえてあまりメジャーではないアブルッツォ州を先にご紹介したいと思います。何故なら、マニアックなところが個人的に好みだからです(笑)。

アペニン山脈とアドリア海に挟まれているアブルッツォ州は、アペニン山脈の中でも最高峰のグラン・サッソ(Gran Sasso)やマイエッラ山地(La Maiella)といった雄大な山々がある大変自然豊かで面積の65%が山岳地帯の人口密度が低い地域。「人よりも羊のほうが多い」と形容されていて、中世以降、移牧(トランスマンツァ)によって経済が成長した正に羊で発展した州です。

その環境的な要因によって食文化も大きく影響されました。羊の串焼き「アロスティチーニ(Arrosticini)」や昔羊飼いがパスタを作れるようにと考案されたとも言われるキタッラ(Chitarra)という道具を使ったパスタの「マッケローニ・アッラ・キタッラ(Maccheroni alla chitarra)」、唐辛子入りのサラミの「ヴェントリチーナ(Ventricina)」、山羊のチーズを使った料理などが代表的なものです。

またアドリア海に面していることから海の幸も豊かで、地理的に孤立していたために独自の食文化を確立しました。州を代表するワインモンテプルチアーノ・ダブルッツォ(Montepulciano d’Abruzzo)やトレッビアーノ・ダブルッツォ(Trebbiano d’Abruzzo)などがあります。

日本唯一のアブルッツォ料理専門店「トラットリア ダイ パエサーニ」

西早稲田という多少意外なところに位置しているこちらの店「トラットリア ダイ パエサーニ(Trattoria Dai Paesani)」は、日本はもちろん、本場イタリアの大都市ですらなかなか見当たらないというアブルッツォ料理専門店。実は日本で唯一本場そのものの料理がいただける貴重なお店です。


シェフのダヴィデ・ファビアーノさん(写真左)とオーナーのジュゼッペ・サバティーノさん(写真右)著者撮影
サラミ職人であるオーナージュゼッペ・サバティーノ(GIUSEPPE SABATINO)氏と元在日イタリア大使館総料理長出身のシェフダヴィデ・ファビアーノ(DAVIDE FABIANO)氏が生まれ育った故郷に愛情と敬意をささげるとともに、味を守り続け日本に本場の伝えるために始めたというレストランです。

自家製サラミや無農薬野菜などの食材を使用


著者撮影

著者撮影
世界で数人のみという唐辛子入りのサラミのヴェントリチーナ(Ventricina)の職人であるオーナーが腸詰めから全て手作りで作るこちらの自家製サラミは、他では味わえない特別なもの。お店の入り口のところにあるサラミ専用の熟成庫から、本場の味や強いこだわりが伝わります。

野菜はアブルッツォ州に根付くスローフード精神を大切にし、千葉県佐倉市の自家農園から栽培した役50種類の無農薬野菜を使用しています。


著者撮影

著者撮影
温かく陽気な雰囲気の店内はアブルッツォの州旗はもちろん、各種冊子や地図、写真が飾ってあり、まるでアブルッツォそのもの。

アブルッツォを盛り込んだお料理の饗宴


自家製アブルッツォサラミの盛り合わせ 著者撮影
ヴェントリチーナ、コッパ 、チンギアーレなどのサラミの盛り合わせ。全てオーナージュゼッペ氏の手作り。お店で熟成して手動スライサーで美味しく切った、ここでしか味わえない貴重な一皿。

柔らかい食感で、肉の旨みを邪魔しない塩加減。どれも熟成度がちょうどいい具合で、特にヴェントリチーナはピリ辛のスパイスとハーブの味わいとのバランスが素晴らしく、風味が良い深い味わいです。付け添えのカリフラワーのピクルスはもちろん自家農園栽培のもの。


キジソースのモンテプルチアーノを練りこんだキタッラ 著者撮影
いただいたパスタはアブルッツォ州の代表的なパスタの「マケローニ・アッラ・キタッラ」。

伝統的には仔羊の煮込みのソースで食べることが多いですが、今回はパスタの生地にアブルッツォ州の代表的な赤ワインのモンテプルチアーノを練りこんで、それを雉のソースでいただきます。お皿には赤ワインのソースや唐辛子をデコレーション。もちもちで弾力のある麺の食感と濃厚な雉ソース。それに赤ワインのモンテプルチアーノ・ダブルッツォを一緒にいただくと最高のアッヴィナメント(Abbinamento=マリアージュのこと)誕生。

キタッラ(chitarra=ギター)とは!
    アブルッツォ州ラクイラ(L’Aquila)発祥のパスタを作る道具。楽器のギターに似ていることからキタッラと呼ばれている。アブルッツォ州では古くからロングパスタを“マケローニ”と呼んでいて、キタッラで作ったパスタがマケローニ・アッラ・キタッラ(Maccheroni alla chitarra)である。四角形のロングパスタで麺にソースが絡まりやすく、濃厚なソースと相性がいい。


仔羊のアロスティチーニ著者撮影
出たー!羊が多い州だけに、羊の料理は欠かせない。確認をしたら流石にこの仔羊はアブルッツォ州のものではなかったです(笑)
向こうでは日本の焼き鳥のような感覚で食べている仔羊の「アロスティチーニ」。塩胡椒のシンプルな味付けは素材が引き立ち、素朴で懐かしい味。イタリア人はここでアブルッツォを感じるのでしょう。

地元愛や感受性が溢れるオリジナルドルチェがおもしろい

リアルな郷土料理が続く中頼んだドルチェ。どれもお店のオリジナリティーが溢れる上に、前のお料理とのギャップが凄すぎておもしろい。


チャッチャコーラの巣 著者撮影
なんか急にメルヘンな感じがきました。チャッチャコーラとはアブルッツォの鳥の名前。その鳥の巣に見立てたドルチェです。

卵のようなホワイトチョコを割ってみると中身も本物の卵みたいー!鳥の巣を表現した飴細工がとても華やかで急にキラキラ女子会気分(笑)。ほろ苦で飴細工も美味しい。最後にこのテンション、とても望ましい流れです(笑)。


マイェッラ 著者撮影
お店の看板メニューでもあるこちらは、標高3000mに近いマイエッラ(Maiella)の雪山を表現したオリジナリティー溢れるドルチェ。

白い球体の下には濃厚なチョコレートのソースで、出てきた瞬間からその香りに圧倒されました。ヨーロッパによくあるとても甘そうな印象で一瞬大丈夫かな?と思ったけど、食べてみるとこれは驚きの美味しさ。球体は卵白と中には黄色いアイスクリーム。下のチョコレートソースは想像と違ってとてもビターで大人な味。このソースをまぶしながらいただくと、今までとは全く違う印象で新たな感動が味わえます。

店内のワインはもちろん全てアブルッツォのもので、ソムリエでもあるオーナーが直接生産者のところを回って仕入れた貴重なワインです。この郷土料理にぴったりのワインと一緒にアブルッツォに浸ってみてはいかがですか?

イタリア人やプロの料理人たちが集うこの店。全ては理由がありました。ここが「アブルッツォ」なのです。

※お店の情報は記事投稿日時点のものです。訪れる際には予め営業日時をお店にご確認ください。

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