自分たちが「いまこれが好き」と言える料理を

“おいしい”の向こう側に、“楽しい”がある。AURELIO オーナーシェフ・大本陽介さん

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おいしんぐ!編集部

東急井の頭線・神泉駅から徒歩2分、渋谷区円山町の一角に佇む『AURELIO(アウレリオ)』。繁華街の喧噪から離れ、落ち着いた大人の渋谷エリアで、イタリア郷土料理とナチュラルワインを楽しめる人気店だ。旬の野菜や果物を使った前菜、丁寧に作られる手打ちパスタ、厳選された自然派ワイン、ナチュラルなトーンにまとめられたインテリア……。これだけでも連日お客でいっぱいになる人気の理由になりそうなものだが、更にこのお店の魅力は、オーナーシェフみずからとそのチームによる接客サービスだ。

店を訪れドアを開けると大歓迎で招き入れられる。初めて訪れる人でもリラックスできるよう、それぞれの客のペースに合わせて話しかけてくれる。料理に合うおすすめのワインを聞けば、その背景にあるストーリーとともにおいしいワインが次々と出てくる。スタッフ同士の抜群のチームワークで、できたての料理がテーブルへと運ばれる……。この店に来た誰もが、店の中に流れる楽しく温かな空気に触れ、帰る頃には「また訪れたい」という思いになっている。

人々を魔法にかけるような、この究極の居心地のよさはどこから来るのか。2016年にこの場所で「AURELIO」を開店したオーナーシェフ大本陽介さんに話を聞いた。現在はサービス担当に回り、店内を軽やかに動き回りながらお客さんやスタッフとの時間を楽しむ彼の持論は「楽しい=最強説」だった。

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東急井の頭線・神泉駅から徒歩2分ほど。2016年7月にオープンした「AURELIO」。


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始まりは、渋谷センター街での学生アルバイト

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「AURELIO」のあだ名のとおり、太陽のように明るい大本陽介さん。「この仕事が大好き。生まれ変わっても飲食店をやりたいです!」

——料理人を目指したのはいつぐらいからでしたか?

大本:最初は料理人になろうなんて考えていなかったんです。親が大学へ行かせてくれて、18歳のときに山口県から東京に出てきました。

在学中、生活のためにと渋谷センター街にある定食屋でアルバイトを始めたんです。そこはお客さんが150人ぐらい入る忙しい店で、田舎にはないガヤガヤした感じがすごく楽しかったですね。バイトではありましたが、キッチンもサービスも両方やらせてもらいました。毎日怒られたんですけど、それも気持ちよくて、楽しくて。

その店を経営していたのはあるベンチャー企業でした。ぼくとそれほど歳も変わらない21~22歳ぐらいの先輩達が、いつか自分の店を出すためにと頑張っている姿を見て、カルチャーショックを受けましたね。同じアルバイトでも、ただの学生バイトと夢を持っている人とではこんなに違うのかと。


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ナチュラルなインテリアで、居心地のいい空気が流れる店内。

——アルバイトでの経験が、飲食業界に入るきっかけだったんですね。

大本:ちょうどその頃、渋谷で“夜カフェ”ブームが起こっていて、「モンスーンカフェ」をはじめとした「グローバル・ダイニング」系列の店が人気だったんです。すごくかっこいいなと思ったし、人に喜んでもらえる仕事をしたいなと。そして「グローバル・ダイニング」でアルバイトをしました。バイトとはいえ時給も自己申告制で、自分の努力に対して評価してもらえたり交渉ができたりと、いい経験をさせてもらいましたね。

——大学時代に、いいお店との出会いがありましたね。

大本:でも、大学卒業にあたって就職活動はしました。真珠で有名な宝石業の会社にも内定もいただきました。人に喜んでもらえる仕事をしたかったのと、100万~200万円ぐらいの買い物をするお客さんが満足をするようなサービスを提供する仕事って、やりがいがありそうだなと。

でも、研修にいきながら「40歳、50歳になってもこの仕事をやっていたいか?」と考えたときに、やっぱり飲食業にいきたいなという思いを捨てられなかったんです。


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——それで飲食業に転向を?

大本:大学4年のときに下北沢のダイニングバーでバイトを始め、卒業後はそこに正社員として入社することになりました。自分で好きなようにお店を作れるような環境で、すごくやりがいがありましたね。入社後すぐに店長もやらせてもらって、4年ほど働きました。

——バイトからの就職だったのですね。その後は?

大本:23歳ぐらいから、将来は自分でお店をやりたいなと考えるようになって、やるならイタリアンだろうなと。自分で食べるときも、メニュー開発するときも、イタリア料理のジャンルが一番好きだったので。

その頃、下北沢の「ディアーナ」というイタリアンバールによく通っていたんです。イタリアのナチュラルワインや郷土料理を知れる、すごくおもしろいお店でした。まだカフェバーが流行っていて、ワインはそこまで飲まれていなかった時代です。ぼくもワインはあんまり得意じゃなかったのですが、初めてナチュラルワインを飲んだときに、「なんだこれは! おもしろいぞ!」と。

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鹿ハツと野生エノキのソテー1800円。広島県安芸高田市から届いたフレッシュな鹿肉をバターと塩胡椒でシンプルに味付け。臭みはいっさいなく、ジビエならではのピュアな肉の味を噛みしめられる。


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——そのお店で、ナチュラルワインとの出会ったのですね。

大本:それで好きになりましたね。その後、当時「ディアーナ」で働いていた羽賀さんと、シェフの一戸さんが新しく「クオーレ・フォルテ」というイタリアンバールをオープンされまして、オープンから1年ほど経ってからぼくもお店に入ることになりました。いつか自分でイタリアンの店をやろうと思ったのは、そこでの経験が大きいです。

イタリアで目の当たりにした、ワイン生産者の「覚悟」

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——大本さんは、イタリアでの経験もお持ちですよね。

大本:28歳まで「クオーレ・フォルテ」で働いて、その後イタリアへ行きました。ちょうどワインのインポーターである「vinaiota」の太田久人さんが定期的にイタリアのワイナリーを訪問されている時期で、太田さんもイタリアにいらっしゃったんです。前半は一緒に北イタリアのワイナリーなどを回らせてもらって、いい経験をさせていただきました。

——どのあたりのワイナリーを回ったのですか?

大本:ボローニャから入って、エミリア・ロマーニャの「カミッロ・ドナーティ」「ディナーボロ」、トスカーナの「マッサベッキア」、サルデーニャの「パーネ・ヴィーノ」とか……太田さんと離れてから自分で回ったところも含めると全部で40弱ぐらいのワイナリーを見ました。

——印象に残っているのは、どんなことですか?

大本:もう、感動の連続でした。ナチュラルワインについて一番感じたのは、言葉で説明するより体験するほうが、得られるものが大きいんだなということです。

ナチュラルワインは自然と向き合ってワインができていくという、いわば自然農ですよね。それを言葉足らずで理解されてしまうと、「ほったらかし」みたいに思えるかもしれません。


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イタリアのナチュラルワインを中心に、世界各地のワイン150種類ほどがそろう。グラスワインも20~30種類と豊富。

——そうしたイメージで捉えている人も多いかもしれませんね。

大本:何も農薬を使わないし、自然の力のみで栽培するからこそ、毎日畑を見てあげないと、本当に一日で様子が変わっちゃうんですよ。ナチュラルワインの生産者たちは毎日それに向き合って、大変な労力を使っている。そして大量の収穫も望まずに、その年にできた分だけでおいしいワインを作る。できたブドウがすぐお金になるような作り方もしない……。それは、すごい覚悟があるなと思って。


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——エチケット(ワインラベル)をどんなに読んでも、生産者の覚悟までは見えにくいですものね。

大本:ぼくもイタリアに行くまでは「味わいのぶどう」とか「その土地の土壌による味」とか、いわゆるテキストで得られる情報から、「ああ、こういう感じのワインなのか」と感じることが多かったんです。

でも、本当はもっと精神的な要素がナチュラルワインには多くあるんじゃないかと思うようになりました。たとえば気象状況だったり、人柄だったり、その人の、そのときの気持ちだったり……そういうものが表れる、すごいアートでエモーショナルな液体だなと。

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コルドネッティ・カレッティエッラ1600円。シンプルなトマトソースにニンニクと唐辛子を加え、太めの手打ちパスタにからめた一品。

——その頃から、将来の自分の店でナチュラルワインを扱おうという気持ちだったんですか?

大本:そうです。だから生産者たちのサインをもらって、絶対店に飾りたいと思って。この店の入り口に貼ってある寄せ書きは、そのときに書いてもらったものです。

——店内の壁にもいくつかサインが書かれていますよね。実際にお店にも生産者の方々がいらっしゃるのですか?

大本:はい。イタリアで出会った方だけでなく、インポーターさんが新しく連れてきてくれる生産者さんもいます。やっぱり自分たちが作ったワインがどんなふうに飲まれているか、どんなふうにお客さんに喜ばれているかというのを、生産者はなかなか直接見られないですから。来てくださるのは、すごく嬉しいことだなと思っています。

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壁にはワイン生産者たちの直筆サインも。

自分たちが「いまこれが好き」と言える料理を

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——お料理の経験はどのように積んだのですか?

大本:もともと料理は22歳ぐらいからずっとキッチンでやっていて、イタリアでも前もって紹介してもらっていた南イタリア・ポルティチのレストラン「ヴルカニア」のキッチンで働きました。そこは規模も大きな店で、パスタやピザなどいろいろなメニューがありましたね。

半年ぐらい働いてから、自分で当てを探してローマに移り、少し離れたパヴォーナという街にある小さな切り売りのピザ屋さんで働いていました。タダ働きのようなかたちでしたけど、自由にやらせてもらっていましたね。

結局、帰国したときに自己資金がなくなってしまっていたので、働いてお金を貯めようと入った東京のお店でも、手打ちパスタなどの料理をやらせてもらっていました。30歳で自分の店を出すのが目標だったんですけど、その関係で31歳になっちゃったのですが(笑)。


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ブカティーニ・カチョエペペ1600円。イタリアから輸入したスペシャルな乾麺を使用。穴の空いたパスタに、ペコリーノチーズと黒胡椒が絶妙に絡みあう。

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——お料理のスタイルには、なにかバックグラウンドがあるのでしょうか?

大本:最初にイタリアンに触れたときから、自分の好きなものはそれほど変わっていないかもしれません。モダンよりはクラシックなものが好きだし、素材感があるものが好きですね。

イタリアンって、掛け算的な要素がおもしろいと思うんですよ。トラットリアみたいな地元のレストランって、食材の要素がそれほど多くなくて、だいたい2つか3つぐらいなんです。

「2つか3つの要素なのに、こんな味になる!?」みたいなところがおもしろい。何が入っていて、いま何を食べているのかがわかりやすい皿が、ぼくは好きなんですよね。


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——「AURELIO」のお料理は、必要以上の味付けをしていませんよね。それよりも食材の組み合わせを意識されている気がします。

大本:それはめちゃめちゃ大事にしています。それからイタリアでいいなと思うのが、定期的に朝市が開催されていて、その日の朝に料理長と食材を見ながら「今夜はこれにしよう」とできることなんですよね。日本、とくに東京では仕込みを組んで、食材を発注して……すごく効率よく仕事はできるんですけど、なんかあんまりおもしろくないなって。

——それは大きな違いですね。

大本:だから、うちはメニューや仕込みを多くしないかわりに、ちゃんといつも変化があるようにしたいなと思っています。自分たちが「いまこれが好き」と言えるものを出したいなと。

たとえば2名様で5~6皿食べたらお腹いっぱいだし、メニューが数多くあっても全部食べきれませんよね。仕込みを多くして、いつ作ったのかわからないものを届けるよりは、いつも新鮮でおいしいものが、お客さんに届く方がいいなと思っています。


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——メニューの中でも、とくにパスタに力を入れていますよね。

大本:パスタ、好きなんですよ~。毎日食べても飽きないです。うちのパスタは「麺を食べる料理」っていうイメージでやっていて、パスタとソースの絡まり方は、毎回めちゃめちゃ研究しています。手打ちはずっとやってきていますし、最近は低温熟成のおいしい乾麺に出会ったので、それも使うようになりました。

大量生産型の安い乾麺の場合だと、熟成や乾燥時間が短いからすぐ茹だるんですが、低温熟成の乾麺はかなり高級で、茹で時間も長いので手打ちより大変なぐらいなんです(笑)。そのかわり表面もざらっとしているからソースとよく絡むし、粉の香りもすごくあっておいしいんですよ。

型にはまらない、自由なスタイル

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——料理の味だけはなく「AURELIO」には常に活気があふれているというか、スタッフみなさんの動き方や雰囲気作りを含めて、イタリアの空気感を感じます。何か特別に意識されていることがあるのでしょうか?

大本:ぼく、1日の営業の中で決まったスタイルを作るのが嫌なんですよ。スタッフのみんなにとってはやりづらいかもしれないけれど(笑)。

たとえば、昨日までいいと思っていたものでも、「今日この感じだったら、変えたほうがムードが出るな」と思ったら、すぐ変えちゃいます。お肉の焼き方でも、たとえきれいに火が入っていても温度が見えない料理は嫌だなと。牛肉なんかはちょっと甘くてもいいから厚くて肉汁が出ていて、しずる感が皿に出ているほうがいいなとか。

いつも自分が気持ちよく表現できる場にしたいし、いつも進化していたいんです。自分が好きな料理やワインの軸はあるけれど、それをアウトプットする方法はいろいろあると思うので。

——とても自由なスタイルですよね。

大本:そういう意味では、イタリアでの経験は大きかったですね。日本のレストランのように長い時間カンヅメになって働いて、「今日も仕事に行きたくないな~」みたいな人って、イタリアにはほとんどいないんですよ。新しく買った服を嬉しそうに着て来たりとか、おしゃべりしていて仕事が始まるまでに時間がかかるとか(笑)。

——イタリアで得た経験が活きているんですね。

大本:どうしても日本のレストランでは、店側の目線になりやすいと思うんですよ。たとえばお客様のご来店やオーダーの仕方やタイミングも「お店のベースにお客様が合わせるのが普通」みたいなところがあったりしますよね。

イタリアはほとんどそういうのを気にしません。「3名様で予約だったのに2名様になっちゃって、テーブルが空いてもったいなかった」なんてことは言わないです。うちの店でもスタッフには「あのお客さんはいけてる」「いけてない」とか、絶対に言ってほしくないんですよ。それって店側の勝手なエゴなので。


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——そうですね。

大本:自由といっても、ゆるいのがいいということではなくて、注意すべきことは注意するけど、それでも営業が始まったら「楽しい」が一番です。おいしいものを作り、おいしいワインを出すのは当たり前。「おいしい」の向こう側は何だろうなって思ったら、やっぱり「楽しい」です。「楽しい最強説」ですよ(笑)。楽しいを体現したい、というのはイタリアで感じたことですね。

通りがかりの人に手を振って挨拶できる店に

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——「AURELIO(アウレリオ)」という店名の由来は?

大本:南イタリアで働いていたとき、酔っぱらったお客さんに「お前はなんていう名前だ?」と聞かれたので「陽介だよ。親が、太陽みたいに明るい子になるようにという意味でつけてくれたんだ」って言ったら、「じゃあイタリア語ではAURELIOだね」って。

正しい意味は定かではないんですが、ピンと来て気に入って、その場ですぐにメモしました。ローマに行ってからも、陽介だと発音しづらかったので、AURELIOのあだ名で呼んでもらっていましたね。イタリア修行中に自分のお店の名前が決まればいいなと思っていたのですが、いろいろ考えた中でもAURELIOだなと。


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——いい響きですよね。場所は渋谷にしようと最初から決めていたんですか?

大本:自分を応援してくれるお客さんたちが来やすいところ、そしてカウンター席の接客がメインでできるところがよかったんです。毎日どうにかカウンターに5人ぐらいでもお客さんがいたら、初めての人が外から見て「入ってみようかな」と思ってくれるかなって。

だから絶対に路面店の1階がよかったですね。外から見たときにぼくが手を振って、入って来てもらえるように。そういう場所はどこだろうと考えたときに、渋谷しか思いつかなくて。

——渋谷の中でも落ち着いていて、いい場所ですよね。

大本:ここの物件はすぐにピンときたんです。不動産屋さんに聞いたらすごく人気で10軒ぐらい申し込みがきていたみたいで。でもなぜかぼくは自信があり、企画書やメニューや銀行に出すような売上げの資料を作ってプレゼンしました。「月の売上はこのぐらいだから、絶対に家賃は払います! ぼくに貸したほうが絶対いいですよ!」みたいな(笑)。

——お店を見ていて、スタッフ同士の関係性もいいなと思うんです。キッチンにメンバーが増え、いま大本さんはキッチンからサービス側に回ってお客さんを迎え入れる役割になっていますよね。そういったチーム作りにおいて、大事にしていることはありますか?

大本:スタッフにはお店のためにではなく、彼ら自身のために働いてほしいと思っています。お店を通して、お客さんを通して、でも最後は自分自身のために。その結果、自分のやった仕事や表現したことがお客さんに届いて、また自分に返ってくるような環境にしたいんです。それを叶えられるのって、いつも楽しく働けるような環境なんじゃないかなと。

いまぼくは36歳でまだまだペーペーなんですけど、飲食店のスタッフとして20代の子たちを見ていると、考え方も違うし、これまでぼくがやってきたり教えてもらったやり方では誰も続かないなって思うんですよ。だけど、経営者が「時代が違うな」ってくだを巻くんじゃなくて、「何がこれからの時代に一番合っているのか」を考えていかなきゃいけないなと思います。

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——素晴らしいお考えですね。

大本:うちも一時期、スタッフが誰もいなくなったこともありましたし、今後もずっと周りに誰かがいてくれるわけではないとは思っています。やっぱりいまはスタッフのみんなに手伝ってもらえているぶん、ひとりひとりの仕事内容や給料をきちんと考えたい。それが、いまぼくの考える経営者像ですね。

——今後の展望を教えてください。

大本:いまのお店とスタッフを大事にしながら、常にみんなのレベルアップをしていきたいなと思っています。あまりお店自体を拡大したいとも思っていないし、10年後にはもしかしたらぼくひとりで喫茶店をやっているかもしれません。あ、もちろんワインも出す喫茶店でね(笑)。あとは地方で何かおもしろいことをするのもいいかなって考えたりもしています。


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——それは楽しみです。自粛ムードの影響もあり、いまは15時からお店を開けていますよね。15時からワインが飲める営業スタイルもすごくいいなと思います。

大本:最高です。気に入ってます! 地区要請があったり、閉店時間や席の間隔の問題などもあって、最初はどんな批判を受けるかもわからず不安だったんです。

でも営業時間を幅広くすれば混雑も解消できるだろうし、世間の流れを見ても働き方がフレックスになっているから、遅い時間まで飲むよりは、早い時間に飲む人が増えるだろうなと。そこに対応できるお店になりたいなと思ったんです。それに、自分が休みの日に15時から飲めたら最高だから(笑)。

 

では、最後に…。
大本さんにとって、「おいしい」とは何でしょうか——?

おいしんぐ!編集部

大本:おいしいは「楽しい」ですかね。ウフッてなっちゃう楽しさもあるし、噛み締めるような楽しさもあるし、大笑いするような楽しさもあるし。表現はたくさんありますけど、自分のベクトルが少しだけ上がるようなイメージですかね。お客さんが楽しいのが一番です。なんかいいですよね、楽しそうなお店って。

——手を大きく振りながら歓迎してくれたり、帰るときにはギュッと握手してくれたり……いいお店だなーと思います。

大本:そうですか(笑)。でも、ほかの飲食店でも美容系のお仕事でも、人を楽しませる仕事をしている人っていっぱいいますし、本当に何でも勉強になります。そういう意味でいろんな人と出会えるから、飲食店はすごくいいですよね。渋谷っていうのもそういう場所ですし。

若い年齢の子たちがドキドキしながら来てくれるのも、嬉しいんですよね。そういうときは「レストランってこんな楽しみ方があるんだよ」っていうのを伝えたり、経験させてあげたいなって思うし。うちの店で飲食店のおもしろさを知ってもらえたら、きっとほかのお店に行っても楽しめるので。どんなお客さんとの出会いもすべて巡り合わせだと思っているので、ぜひいろんな方に楽しみに来ていただけたら嬉しいですね。

企画・構成/金沢大基 文/古俣千尋 写真/倉橋マキ

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