おいしんぐ!的「ネオペアリング」Vol.1

進化系中華『コクエレ』で中華×日本酒のペアリングを。

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おいしんぐ!編集部
和食には日本酒、中華料理には紹興酒、イタリアンやフレンチにはワイン…。その土地の食材や料理とお酒とのペアリングは「おいしい!」を楽しむための大切な要素だ。

だがその一方で、あえて違う国やジャンルの料理とお酒を組み合わせ、新たな価値の提案をしている店がある。中華×日本酒、おでん×ワイン、ベトナム料理×ワイン…。そこには、単に新しい、もの珍しいというだけではなく「なぜ、それらを組み合わせるのか」という料理人の深い思いや狙い、そこに至るまでの試行錯誤がある。

「おいしんぐ!」編集部ではこうした組み合わせを「ネオペアリング」と呼び、それを提供してくれるお店に注目。数ある中でも自信を持って「おいしい」と太鼓判を押せる店をセレクト。一度味わったら通い続けたくなる名店と、そこで日々挑戦を続ける料理人たちの熱い思いを取材していく。

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中華と日本酒のペアリングが楽しめるお店

おいしんぐ!編集部

東急目黒線・西小山の駅から商店街を進み5分ほど。バーカウンターとテーブル席を合わせて20席ほどの小さな店。ここが、中華料理と日本酒のネオペアリングを楽しめる店『コクエレ』だ。

「中華料理と日本酒なんて…」と思われるかもしれない。しかし、この店の料理は単なる中華にとどまらない。四川や広東などの料理や調理方法を基礎としながら、店主の柘植(つげ)和志さんが独自のアレンジを加えて進化させている。「四川料理には比較的入れないレモンを使ったり、国産の肉に合わせて下処理の仕方を変えたり。麻婆豆腐も、ぼくは木綿じゃなく絹豆腐を使います。自分が“これだ!” と思う味を出すために、なるべく柔軟にやっていきたいんです」と柘植さん。

おいしんぐ!編集部

毎年、本場中国へ通い、山椒やクミン、豆板醤などのスパイスを仕入れる。とくに山椒に関しては、名産地とされる漢源の特級品が欠かせないのだという。「ぼくが作りたいのは、スパイスを活かした“ご飯に合う”料理。自分の好きな味しか出さないんです。ちょっと、我は強いほうかもしれません(笑)」

 

中華に日本酒を合わせるようになった理由

四川や広東料理の修行を積み、ホテルのレストランや中華料理店で料理長を務めてきた柘植さんは、2012年に『コクエレ』を開店。その際に選んだのが、日本酒だった。「当時はまだ日本酒のブームなんて来ていなかったし、扱いにくい印象でした。でも、親しくなった酒屋さんから日本酒の奥深さを教えてもらってイメージが変わりました。こんなに可能性があるのかと」

おいしんぐ!編集部

柘植さんはこう続ける。「ぼくの作りたい料理は、ごはんに合うしっかりとした味。でも、ワインや焼酎に合わせるためには、ちょっとトーンを落とさなければならなかったんです。でも、日本酒はお米が原料だし、紹興酒に近い古酒や醸成酒を選べば、ぼくの本当にやりたい料理に合うはずだ…そう思ったんです」

おいしんぐ!編集部

当初は「中華と日本酒なんて、失敗するよ」と、周りは反対したという。だが、柘植さんはそれをチャンスと捉えた。「みんながよくないって言っていることのほうが、チャンスがあるかなって。そういう性格なんですよね(笑)」。

扱う日本酒は、注文ではなく柘植さん自らが買い付けし、飲んで決めている。「古酒とか生の原酒など、クセがある日本酒はとくにマリアージュしやすいですね」。どれでも1杯(90ml)が550円(税抜)で、常時15~25種類ほどをそろえている。料理に合わせておすすめを出してもらうのも、常連客の楽しみなのだ。
 
 

予約必須の特別メニュー×日本酒のペアリングコース

今回は、通常のメニューには載っていない「予約必須の特別メニュー」を出していただいた。日本酒とのペアリングで紹介したい。

カキの湯引きのシーズニングソース × 黒龍の吟醸 ひやおろし

おいしんぐ!編集部

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一皿目は、カキの湯引きのシーズニングソース(2,500円※値段は時期により異なる)。鹿島産のクリーミーな岩牡蠣を、干しえびとパクチーの根でとったダシのスープと合わせている。「山椒のしびれは抑えめにしたいので、国産の生の山椒を塩漬けしたものを使っています。ネギ油も入っているので、日本酒ともよく合うんですよね」。今回合わせた日本酒は、福井県の黒龍 吟醸 ひやおろし。
 

ゆで豚の青山椒ソース × 赤武の純米 ひやおろし

おいしんぐ!編集部

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二皿目は、ゆで豚の青山椒ソース(1,600円)。脂身多めの豚肉をあえて80度ほどの低温でじっくり焼き、青山椒のソースをかけた見た目にも美しい一品だ。青山椒と青ネギを日本酒で炊き、ミキサーにかけて作るソースにはうまみがたっぷり。その辛みを、下に合わせたキュウリが口の中で中和してくれる。「酢のかわりに、レモンで酸味を足すのが好きなんです。脂身がある肉を使うのも、山椒のフレッシュ感を引き立てるためです」。合わせた日本酒は岩手県の赤武 純米 ひやおろし。「数の少ない超ひやおろし。通常半年のところ、これは1年も低温貯蔵庫で寝かせてあるので、重みが出ていると思います」

 

和牛の山盛りトウガラシ炒め × 美冨久 純米酵房 山廃仕込純米熟成酒

おいしんぐ!編集部

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そして三皿目が、川式牛肉~和牛の山盛りトウガラシ炒め~(2,800円)。たっぷりのトウガラシに、クミン、山椒、ショウガ、ニンニクなどのスパイスを入れ、水分をカラカラに飛ばしながら牛肉を炒める四川スタイルの料理。牛肉はA4ランクの和牛のモモを使用。

ジャガイモ、ダイコン、ネギ、シシトウなどの野菜とともに、ブレンドされたスパイスのうまみを味わえる。「トウガラシに負けないように、和牛を使って対抗しています(笑)。スパイスの香りの“集約”を味わっていただきたいですね」。日本酒は、滋賀県の美冨久 純米酵房 山廃仕込純米熟成酒をぬる燗で。刺激的な辛みに、まろやかな古酒が完璧にマッチする。

おいしんぐ!編集部

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たしかに初めは「山椒のしびれと日本酒とは合わないのでは」という先入観もあるかもしれない。が、柘植さんの料理と日本酒とのマッチングは、その想像をはるかに超えてくる。日本酒が中華系の辛いものと合う、という新たな扉が開かれる感じだ。(もちろん、すべての中華料理がそうなのではなく、やはり柘植さんの料理だからこそ、なのだけれど…)

では、最後に…。
柘植さんにとって、 「おいしい」とは何でしょうか―—?

「おいしいとは、脳で感じるものだと思います。思い浮かべて、味わって、食べ終わったら思い返して…よく、本当においしい料理は3回味わえるって言いますよね。ぼくも、お客さんの記憶に残るようなおいしさを、日々追求しています」

おいしんぐ!編集部

※お店の情報は記事投稿日時点のものです。訪れる際には予め営業日時をお店にご確認ください。

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