生産者と料理人が生み出す極上の一皿 <ポムドテール×野菜農場 叶野>

野菜農場 叶野さんとポムドテール 有坂さんによる極上の『マッシュポテト』

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野菜農場 叶野さんとポムドテール 有坂さんによる極上の『マッシュポテト』

著者撮影
あなたは目の前の料理に使われている食材が、どこの誰が作っているか考えてみたことがあるだろうか?

料理人が丹精込めて仕上げた一皿。素敵な料理の向こうには、食材を作った生産者がいる。しかし両者の距離は思った以上に遠い。どんな人が育てた野菜なのかを詳しくは知らない料理人は多く、一方でどんな料理になって提供されているのかを知らない生産者も多い。仕入れた食材の産地までは分かっても、人と人の心がなかなか繋がっていないのが現状だ。

だが、そんな中、料理人と生産者の両者がガッチリ手を組んで、最高の一皿を提供している人達もいる。おいしんぐ!では、そんなコンビが生み出す心にまで届く一皿を、「生産者と料理人が生み出す極上の一皿」として紹介していきたいと思う。

今回の舞台は山形県鶴岡市だ。

料理人:ポム ド テール 有坂公寿さん


本人提供
今回、極上の一皿を生み出すシェフ・有坂公寿さんは、鶴岡市の中心部でカジュアルフレンチと厳選ワインが楽しめるお店「ポム ド テール」を運営している。

国内で唯一のユネスコ食文化創造都市である鶴岡市から世界一の美食の街で知られるスペイン・バスク地方に派遣された料理人の1人で、鶴岡の食レベルの向上に貢献している方。信頼する生産者の代弁者として、庄内エリアで採れる素材の価値を伝える料理人として、生産者との繋がりを大事に考えている料理人だ。

庄内食材をたっぷりと盛り込んだ料理は、この土地で採れる食材への愛が伝わる珠玉の数々。何と言ってもこちらの料理の真髄は、有坂さんの考える食材の創作力と言える。なかでも心にまで届く極上の一皿と思えたのがジャガイモ「はるか」を使用した『マッシュポテト』だ。

 

高級デザートのような美しいフォルムの『マッシュポテト』


マッシュポテト 著者撮影
「はるか」の果肉は白色でジャガイモには珍しい生でも食べられる品種としても有名。材料はジャガイモと若干の牛乳にバターのみで、ジャガイモのポテンシャルを感じる逸品だ。「はるか」の香りが立った濃厚な味わいと驚くほどの滑らかさが素晴らしく、ずっと食べていたいと思えるマッシュポテトである。

有坂さんに『マッシュポテト』のこだわりや、生産者である野菜農場の叶野幸喜さんについて聞かせてもらった。
 

ーー叶野さんが生産するジャガイモ「はるか」を選んだ理由を教えてください。

叶野さんのジャガイモを選んだ理由は、ほんの偶然からでした。以前勤めていた酒田市の「レストランニコ」の太田シェフと一緒に畑を訪問させていただいたご縁からです。

ーー店名の「ポム ド テール」はフランス語でジャガイモの意味ですよね?

はい。店名はフランス語でジャガイモの意味です。幼い頃の思い入れのあるレストランの店名からいただいたもので、叶野さんを意識した訳ではなくないのですが、こうしてご一緒させていただけてホント不思議なご縁だと思います。

ーー叶野さんが作るジャガイモと他との違いを教えてください。

やはり味……と言いたいところですが、世の中には探せばもっと美味しいものもあるのだろうと思っております。それでも現段階で私の食べたジャガイモではやはり1番うまいですね。

ーー美味しさ意外に、このジャガイモの魅力は何ですか?

何よりも健康的に育ったジャガイモなんだなぁと感じます。丁寧に保管してあげると、通常市販のものに比べて倍以上も日持ちしますし、もちろん味も落ちない。それどころか甘みが増していくように感じます。これは叶野農場さんの野菜全般に言えることで、人参などもやはり非常に健康的です。

ーー有坂さんにとって叶野さんの存在とは?

フレンチにおいての野菜というものの存在を改めて見直させてくれた存在に思えます。いや、野菜だけではなくシェフとしてもですかね。それまで学んで来たフレンチの世界ではここまで多種多様なジャガイモの使い分けをしたことがありませんでした。

そしていつもハツラツと楽しんで農業と向き合う叶野さんをみていると、改めて料理人というのはお客様はもちろんのこと、八百屋さんや肉屋さんや魚屋さん、叶野さんのようなアツい思いを持った農家さんや漁師さん達が周りにいてくれてこそ生かされている職業なのだなぁと感じます。

ーー叶野さんの存在があってこそ極上の『マッシュポテト』が誕生したんですね。

叶野農場のあの素晴らしく美味しい空気や暖かい土壌、そして叶野さんの人柄を知ってしまったら食材は決して無駄に出来ませんし、仮に無駄にしてしまうと、非常に料理人として未熟に感じてしまいます。たまたまのご縁とはいえ、自分の店名でもあるジャガイモに対してこれだけの愛情を注いで育ててくれている叶野さんには心から感謝し、そして信頼しております。もちろん他のジャガイモ農家さんも愛情を持った仕事をされているとは思いますが、私にとってはこれから先に叶野さんから野菜を買わない理由が全く見つからないのです。

ポム ド テール

有坂さんが生み出した『マッシュポテト』で繋がった先には、この一皿を生み出すもう一人、叶野幸喜さんの存在があった。
 

食材の届け人:野菜農場 叶野幸喜さん


著者撮影
今回の極上の一皿を生み出すもう一人が叶野幸喜さん。稲作を中心とする農家が多い庄内地域において、野菜専門で農業を営む野菜農場 叶野は異色の存在。ジャガイモやニンジンを中心に多種多様な栽培を手掛けている。

野菜農場 叶野は、もともとは葉タバコの有力農家だったが、父親の代で「人の体に良い物を作りたい」との想いから、葉タバコを辞め、畑作農家に大転換。その血を継いだ幸喜さんも、お父様に負けず劣らずチャレンジ精神旺盛な方。「人は畑の大工」をモットーに、土づくりには力をいれつつ、未来を見据え、自動運転のトラクター導入や、新しい野菜作りにも果敢に挑戦している。


著者撮影
畑に伺ったこの時期(6月下旬)は、ジャガイモの花が咲く季節。この株が枯れあがるころ、土の中には大きなジャガイモが実り、新じゃがの季節を迎える。
主力のジャガイモは、きたあかりや、インカのめざめなど7品種。個性豊かなジャガイモは、品種により味や料理の向き不向き、見た目が大きく異なる。料理人のリクエストや、自身の興味に合わせて育て品種をどんどん入れ替えていく。


著者撮影
高原に位置する農場は昼夜の寒暖差が大きく、平地の畑に比べてイモに味が乗りやすい。味の良さと、近隣でジャガイモを作る農家がほとんどいないことから、地域でジャガイモと言えば叶野さん。という存在だ。


著者撮影
そんな叶野さんが次の挑戦として取り組んでいるのが小麦作り。庄内エリアは「麦切り」と呼ばれるご当地グルメがあるほか、ラーメンの人気が高い。そんな土地柄もあり、地場の粉で作った麺で街を盛り上げたいと意気込んでいる。


著者撮影
美味しい野菜を食べてほしいと、人との関係づくりにも力を入れる。特に子供たちの農作業体験を大事にしているほか、県の内外を問わず、料理人などの生産者ツアーも積極的に受け入れている。

我々が『マッシュポテト』で繋がったように、様々な受け入れが功を奏して多くの人が野菜農場 叶野を訪れるようになり、人が人を呼んで輪がどんどん広がっているようだ。
 

野菜農場 叶野

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