スパイスと愛情をたっぷり入れて…。

この道40年の職人技で焼く、ジューシーな骨付鳥。「骨付丸亀鳥」亀岡久雄さん

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骨付鳥

おいしんぐ!編集部

歯ごたえを楽しめる親鳥、やわらかな食感がたまらない若鳥。2種類の鶏もも肉を堪能できる丸亀名物・骨付鳥は、香川を訪れたら必ず食べたいご当地グルメだ。元祖骨付鳥の店をはじめ、丸亀に数軒ある店の中から、今回編集部が取材を申し込んだのが「骨付丸亀鳥」。ここは40年ほど前、まだ骨付鳥が名物として知られるようになるずっと以前から、大将・亀岡久雄さんが家族と共に営んできた骨付鳥専門店だ。

骨付鳥を焼き続けて40年。試行錯誤しながら、自分だけの味付けと焼き方を研究してきたという亀岡さん。「とにかく、まずは食べて。取材はそれからや!」ということで、焼きたての骨付鳥2種類をしっかりといただいた後、常連客や団体客で賑わう店内にて話を聞かせてもらった。インタビュー後半からは、常連客のひとりが加わって居酒屋トークに…。

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一見コワモテの大将だが、言葉の端々から「おいしい骨付鳥を食べてもらいたい」「骨付鳥のおいしさをもっと広めたい」という熱い気持ちが垣間見える。独自の味付けと焼き方で仕上げたジューシーでコクのある骨付鳥だけでなく、大将の人柄もまた、地元で長く愛される理由なのだろう。新鮮な骨付鳥をひと口いただけば、スパイスの効いた旨味や香ばしさとともに、その深い愛情が伝わってくるはずだ。


外観 おいしんぐ!編集部

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丸亀駅から徒歩約8分。丸亀市役所の向かいに建つ「骨付丸亀鳥」。常連客が集うカウンター席と、ゆったり座れるテーブル席がある。メニューは骨付鳥や串焼き、おつまみがメイン。骨付鳥はテイクアウトもできる。

 

職人として辿り着いた自分の味

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「骨付鳥の味は、なかなか言葉では伝わらんから。まずは一度、食べに来てもらえたら」と語る、大将の亀岡さん。

——親鳥・若鳥ともに、とてもおいしくいただきました。食べ比べして食感の違いが楽しめるのがいいですね。

亀岡:そやろ。親鳥は歯ごたえがあって、若鳥はジューシーで。どっちもビールに合うし、しつこくないから赤ワインにもすごく合うんよ。

——たしかに合いそうですね。こちらのお店では、どのような鶏を使っているんですか?

亀岡:鶏には100日鶏とか、200日鶏とかいろいろあるんやけど、うちの親鳥は420日のものと決めて使ってる。少し歯ごたえがあるけど、やわらかさもあって、親はこれがベストや。若鳥は生後42~43日のを仕入れてる。

仕入れは、長年お世話になっているかしわ屋(鶏肉屋)さんから。地鶏じゃなくてブロイラー(一般的な食肉用の鶏肉)や。けど、だからこそこの価格でできてる。親も若も、安くてフレッシュでおいしいっていうのが、うちの骨付鳥や。

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歯ごたえとやわらかさのバランスを楽しめる親鳥850円。塩、胡椒、ガーリックスパイスで味付けをし、鶏の油を閉じ込めながら焼き上げることによってコクのある味わいが引き出されている。調理バサミがついてくるので、ひと口サイズに切っていただこう。


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——味付けと焼き方はどのように?

亀岡:味付けはお酒に合うように、ちょっと濃いめやな。まずフレッシュな鶏を、塩と胡椒でガッとしめる。しめとかんと、鶏がだらっとするからな。そしてガーリックスパイスを効かせて、1~2日寝かす。

味をつけたら、鶏油(ちーゆ)を肉に閉じ込めて味を逃がさんように、オーブンでまろやかに焼くんや。鶏油というのは、混じりけのない鶏のきれいな油やな。焼いたときに、肉から油が出るやろ。ふつうに焼いたらそのおいしさがぼろぼろ落ちてしまうから、オーブンの鉄板の中に落としておいて、あとでそれをかけて染み込ませるんや。

——スパイシーな風味が、添えてあるカイワレともよく合っているなと感じました。カイワレを添えるのは、亀岡さんのアイデアですか?

亀岡:これは、よそはやっとらんのよ。見栄えもええし、肉と一緒に野菜を食べるんも、さっぱりしてええやろ。

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生後42~43日の、やわらかくジューシーな若鳥850円。骨の周りのスペアリブ部分も、脂身が多めでおいしい。さっぱりとしたカイワレが肉の旨味をいっそう引き立てる。ビールはもちろん、ワインとの相性も抜群。

——亀岡さんが、こちらのお店をはじめたきっかけを教えてください。

亀岡:もともとは調理師をしとったんや。和食や中華、洋食レストランにもいたし、船にも乗ったし、家族で食堂もしたりな。40年前にここで鶏料理専門店をやっているおやっさんがおって、その方から引き継いだのが始まり。もちろん、味は自分流に変えていったけどな。

いろいろ店を点々としてきたけど、40年前にやっとここで落ち着いた。ちょうどバブルの時代で、みんな毎晩のようにビールばっかり飲んでたから、これで飯食えるな、と思ったわ(笑)。

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——その頃から、丸亀周辺には骨付鳥のお店はいくつかあったのでしょうか?

亀岡:元祖の骨付鳥を始めたのは「一鶴」さんというお店で、そこが人気になったから、少しずつ他にも増えてきた感じやな。骨付鳥は丸亀市がここ15年ぐらいで押し出してきて、徐々に知られるようになったけど、正直、店によって味に差はある。専門店じゃなくて、普通の居酒屋が骨付鳥をメニューで出している場合も多いけど、本来の骨付鳥とは違うんじゃないか、というのもある。観光で初めて骨付鳥を食べに来た人が、それで満足されたら辛いなと思ってるわ。

——味付けや焼き方は店ごとに違うものですもんね。

亀岡:やっぱり店によって、職人によって、味が違うのは当たり前や。うちの息子にも焼き方を教えて、いま息子は高松で店を出しているけど、うちと味は違う。最初は同じスタイルでやってたけど、やっぱり徐々に変えてきたな。それは、職人としての自分の味ができてくるからや。

うちの常連さんが息子の店でも食べてくれて、「おまえの味と息子の味は違う」なんて言われたけど、それでいい。親父がずっとついておったら、いつまでたってもダメやろ。息子はまだ若くて40代やし、あいつはあいつの味になっていく。反対に、いつもどこでも同じ味というのは、フランチャイズやチェーンの店なんや。…いま、骨付鳥について語れる常連さんが来てるから、ちょっと呼んでみようか。

 

丸亀の人々に愛され続ける理由


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——…いきなり取材に巻き込んでしまい、すみません(笑)。

平井:いえいえ。丸亀生まれ、丸亀育ち、今も丸亀で商売をしている平井と言います。ここの店はもちろん、他の店も含めて1週間に2~3回は骨付鳥を食べています。だから今、大将が声をかけてくれたのかもしれません(笑)。

——なんと! 偶然とはいえ、そんな方にお話を聞けるとは嬉しいです。いろいろな骨付鳥を食べ歩きながら、感じていることを教えていただけますか?

平井:うどんもそうなんですけど、正直に言って、テレビでよく取り上げられる有名店と実際に地元民が使っている店は違うってこと、ありますよね。骨付鳥も同じです。ただし実は、元祖かつ一番有名な「一鶴」さんの味は、本当においしいです。ぼくが思う本当においしい骨付鳥は、「一鶴」「骨付丸亀鳥」「藤ちゃん」の3店ですね。ちなみに「藤ちゃん」は、「一鶴」の初代大将が屋台で店を始めたときに、その焼き場で鶏を焼いていた職人さんが出した店ですね。


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おすすめは、親鳥と若鳥の食べ比べをした後、塩にぎりを追加オーダーし、カイワレや付け合わせのキャベツとともに、油に浸していただくという楽しみ方。

——3店だけなんですね。

平井:地元の人間からしたら、通いたい店はそれほど多くないんですよ。ここは市役所や銀行の人がよく来るような、地元で愛される店です。骨付鳥って、スーパーで鶏肉を買って、家でフライパンを使って焼いても作れる料理なんです。そういう感じの骨付鳥を出している店もあるんですよ(笑)。

でも、ここの店の大将の味付けは、家では絶対に再現できないですよ。ここでしか食べられません。カイワレがついているのもこの店だけ。噛んだときに少し辛いでしょ。それがポイントだと思います。

亀岡:そやろ。カイワレはいいアイデアだと思うのに、誰もマネせんのや。


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平井:だって、マネしたら大将に文句言われるでしょ。だから他の店は絶対にカイワレを乗せられませんよ(笑)。

——きっと、大将のこうしたお人柄も魅力なんでしょうね。

平井:はい。一見、ぶっきらぼうで怖そうなんですけど、情に厚いんです。実はぼくも最近仕事が忙しくて、今日は2週間ぶりに来たんです。というのも大将から「おまえ何をしよんや?」と電話がかかってきて…。「顔を見んかったから心配や」と。だから、心配されてるのかなと思って飲みに来たんですが、さっきも顔を見るなり「お前誰や?」って…。ツンデレですよね(笑)。でも、そうやって心配してくれるのは嬉しいですよ。もちろん、骨付鳥も焼き鳥もおいしいですしね。

亀岡:そのぐらいアットホームな店なんや!(笑)

——平井さん、ありがとうございました。では大将、今後目指していることがあれば教えていただけますか?

亀岡:全国的に見れば、骨付鳥はメジャーではないけんな。だから全国に発信したい。だから今も地元のハーフマラソンみたいなイベントに出店したりして、発信をするようにしてるんや。やっぱり、大切なのは発信や。今回もわざわざうちを調べて選んでくれて、記事に取り上げてもらえて本当に嬉しいんよ。

 

では、最後に…。
亀岡さんにとって、 「おいしい」とは何でしょうか―—?

おいしんぐ!編集部

亀岡:おいしいとは…そうやな。おいしいとは、愛することや。人を愛することや、食べ物を愛することは、人間にしかできんこっちゃ。やっぱり骨付鳥が好きやし、だから全国に広めたいと思ってる。この歳でも引退せずに、こうやって続けているのは、骨付鳥をまだまだ広めたいからなんや。

——おいしいとは愛すること…。素敵なお答えをありがとうございます。骨付鳥に惚れ込んでいるからこそ続いてきた味であり、お店なのですね。

亀岡:惚れ込んどる、惚れ込んどるがな。大事なのは、どれだけ骨付鳥に惚れ込んでいて、自分の味を愛しているかやないかな。

企画・構成/金沢大基 文/古俣千尋 写真/祭貴義道

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