先人から受け継いだバトンを、次の世代へ――

江戸切子職人が創り出す “おいしさ”と“驚き”。「堀口切子」三代秀石・堀口徹さん

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江戸切子職人が創り出す “おいしさ”と“驚き”。「堀口切子」三代秀石・堀口徹さん

おいしんぐ!編集部

江戸時代後期から続く伝統工芸「江戸切子」を製作している江戸切子職人の堀口徹さん。日本の伝統工芸士として認定され、国内をはじめニューヨークやパリ、ロンドンでも高い評価を受けている。また東京「日本料理 龍吟」や、神戸「料理屋 植むら」など錚々たる料理店から器製作を依頼されるなど、料理業界でもその名が広く知られる存在でもある。

堀口さんの祖父は、江戸切子技術伝承者の小林菊一郎氏に師事したのち1947年に「堀口硝子」を創業した堀口市雄さん。「秀石」の号を名乗り、アイデアに溢れた新しいデザインの作品を次々と生み出した職人だった。

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徹さんが7歳のときに市雄さんは亡くなってしまったが、その思いとバトンを受け継ぎ、自らも江戸切子職人になろうと決意。二代目秀石を継いだ須田富雄さんに師事し2008年に三代「秀石」を継承、自らの会社「堀口切子」を創業した。現在は「堀口切子」の創業者として、江戸切子の技術と精神を先々まで繋ぐため、後継者の育成にも力を入れている。

先人たちの思いをいかに受け継ぎ、江戸切子製作と向き合っているのか。料理の器を製作する上で、どんなイメージを大切にしているのか。江戸切子職人として考える「おいしい」とは――? 「堀口切子」の工房にお邪魔し、熱い思いを聞かせてもらった。

 

自由度の高い伝統工芸品「江戸切子」


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江戸切子とは、江戸時代後期にビードロ屋を営む加賀屋久兵衛が金剛砂を用いて硝子を彫刻し、切子細工の技法を考案したのが始まり。1985年に東京都の伝統工芸品に指定され、2002年に国指定伝統工芸品にも認定されている

——まずは江戸切子職人のお仕事について教えていただけますか?

堀口:硝子というと口でぷーっと吹くようなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、自分たちのところではやっていません。それは専門の工場や職人さんたちがおられるので、そこから素材を購入し、自分たちはあくまでカットや磨きなどの加工をして仕上げていく仕事です。いわば、漁師さんとお寿司屋さんの関係ですよね。

——おおよそどのような工程で製品を作っているのでしょうか?

堀口:カットの目安となる基準線をつける「割り出し」、ダイヤモンドホイールで硝子を削りながら大まかなデザインを決める「粗摺り」、粗摺りからさらに細かくなめらかなカットをほどこす「三番掛け」、人工砥石や天然石を使ってカット面をよりなめらかに仕上げる「石掛け」。そして、研磨剤を使ってカット面の光沢を出す「磨き」、磨きの仕上げをする「バフ掛け」という磨きの工程があります。

大きくはこの6工程ですが、すべてを行わなければならないというわけではありません。ものによっては割り出しの後に三番掛けをして完成させるものもありますし、あえて磨きの工程を入れないものもあります。江戸切子って実は、デザインも自由だし、用途も色も形も自由なんですよ。


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「堀口切子」三代秀石・堀口徹さん。「堀口硝子」を創業した初代秀石の堀口市雄さんを祖父に持つ。「堀口硝子」で学んだ後、二代目秀石の須田富雄さんに師事して三代秀石を継承。国内での展覧会をはじめ、ニューヨークやパリ、ロンドンでも高い評価を受けている。江戸切子新作展最優秀賞やグッドデザイン賞など受賞歴多数

——堀口さんの作品を拝見していると、伝統的なスタイルなものから装飾性を抑えたモダンでスタイリッシュなものまで、実に幅広さを感じます。これらすべてが江戸切子なのですね。

堀口:はい。ただし「何をもって江戸切子と言えるのか」という基準は必要です。使い手の人やお客様に説明がつくことが大切ですから。

江戸切子協同組合で定義を決めることになったとき、さまざまな話が出たんです。先人たちが作ってきた江戸切子を踏襲していなければならない。加えて、いま自分たちが作っているものも江戸切子だと言えなければおかしい。さらに、今後作っていくものや作る可能性のあるものの可能性を狭めてしまうのはいけない。


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——そのすべてを満たさなければなりませんね。

堀口:先人が作ってきた江戸切子には、簪(かんざし)や筆立て、文鎮もあるし、色だって赤、青のほかに変わった色もある。青を出そうとしたんだけど、たまたま厚みが出なくて水色に見えるようなものもあるし、いろいろな青みがあるからくくれないんです。文様もいろいろあるけど、一切入っていないものもあるから、デザインでもくくれない。

15年ぐらい前、職人さんの間では「江戸切子はこういう柄が入っていなきゃだめだ」みたいな意見もあったんです。でも幅を狭めてしまうと、そこに含まれない作品が出てきてしまうんです。

そこで定義として「①硝子であること、②手作業、③主に回転道具を使って加工すること、④産地指定(江東区を中心とした関東一円)」を定めました。先人たちが作ったものが幅広かったからこそ、自由度を高くせざるをえなかったんです。


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——それほどまでに先人たちの残したものが、自由でバリエーション豊かだったのですね。

堀口:結果的に、定義を狭めないで本当によかったと思っています。狭めれば狭めるほど、仕事ができなくなることがありますから。たとえば料理店から「こんな演出をしたいから、こんな江戸切子で作ってほしい」とオーダーがあったときに「いや、それだと江戸切子じゃなくなるんだ」みたいに、できないものが出てきちゃう。使い手のリクエスト次第で、形、用途、色は自由に作れるのが江戸切子なんです。

 

料理店の常連さんを楽しませる器を


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何事もこだわるのが好きだという堀口さん。「こだわっていない江戸切子職人なんて嫌でしょう。やっぱり、自分が好きでやっている仕事だから。好きなものに囲まれて、自分の好きな要素を取り入れながら働いているっていうのが正直なところです」

——堀口さんは東京の「日本料理 龍吟」や神戸「料理屋 植むら」など錚々たる料理店から器製作の依頼を受けています。料理人あるいは料理のための器を作る際は、どんなことを考えながら臨んでいますか?

堀口:さまざまなケースがありますね。自由に作ってほしいとオーダーいただくこともありますし、料理人の方から詳細な情報をいただくこともあって、後者の場合は作るものが限定的になると同時に明確にもなります。店内の間取りや照明、従業員の人数やお客さんへの出し方を聞きながらデザインを考えられるわけです。


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堀口:今回作る器は、お客さんが手に持つのか、持たないのか。もしお客さんが持つ器なら、見た目と実際の重さの差をつけないほうがいいんです。軽い見た目なのに重かったり、その逆でも事故につながりますから。反対に、お客さんが手に持つことはなくサービスの人だけが持つ器なら、差があっても事前にお店の人たちで共有しておけばいいわけです。

——まずは、どのように使われるかをイメージされるのですね。

堀口:例えば「料理屋 植むら」のご主人、植村良輔さんからリクエストされたのは、店のスペシャリテ「セコガニの面詰め」のための器でした。セコガニの上にかまくらのようにドーム状の切子をかぶせるもので「育む器」というタイトルをつけました。


堀口切子
「料理屋 植むら」https://www.ryouriya-uemura.com/

——育む器?

堀口:ところどころ摺り硝子になっていて、中が見えるようで見えない……そんなデザインでした。「植むら」さんでの1年目のシーズンが終わった後にうちに送り返してもらい、さらに加工を加えたんです。2年目には摺り硝子部分に磨きを入れて完全に透明にした状態にしました。そして3年目には、表面にさらに細かなデザインを加えたものを送りました。

——年を経るごとに硝子のデザインが変化していく……だから「育む器」なんですね。

堀口:植村さんからいただいたリクエストが「常連さんを楽しませたい」だったんです。毎年、季節の料理を楽しみにやってくるお客さんに、いかにサプライズを与えられるかを二人で考えました。それで「1年目、2年目、3年目って、器が育っていくのって面白くない?」という話になって。

気をつけたのは、完全には気づかれない程度の微妙な変化です。「あれ、こんな器だったかな? 昨年とどこか違うような……」と1年前の記憶を辿って、気づく人は気づくかもというバランスを大事にしました。

——変化していることを大っぴらには言わない……粋な演出ですね。

堀口:イメージしたのは、4年目に常連さんから「今年はまた変わっているの?」と聞かれた植村さんが「いいえ、この器は3年で完結なんです。聞くところによると、一流の画家は最後の一筆を入れないらしいんですよ」という話をする……そんなワンシーンです。ここまでが、この器のストーリーなんです。

 

掘り下げることで見えてくるもの


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——お祖父様が江戸切子職人だった堀口さんですが、ご自身も職人を目指した理由は何だったのでしょうか?

堀口:カッコよくないですか、江戸切子職人(笑)。……まあ、理由としてはいろんな要素があります。例えば伝統工芸や職人への漠然とした憧れもあるし、自分たちの時代でいうとサラリーマンやデスクワークへの嫌悪感もありましたし。

自分が小学1年のときにおじいちゃんは亡くなっているんだけど、家族やおじいちゃん、自分自身も含めて、自分が江戸切子職人になったらハッピーになれるんじゃないかなっていう思いもありましたね。おじいちゃんから代々続いてきたバトンをつなぐリレーがかっこいいなと。ほら、リレーって運動会でも水泳大会でも、花形じゃないですか? その一員になれるのはいいなと思ったんですよね(笑)。


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——先人たちが残してきたものを次世代に繋いでいくお仕事ですが、重圧などを感じることは?

堀口:重圧という言い方をするとネガティブな感じがするので、僕はあまり感じないし、受け止めないですね。重圧を感じても良いことはなさそうですし(笑)。

でも、先人たちから引き継ぐものや、先人たちが築き上げてきたものとして、江戸切子をとても大切に思っています。バトンを受け継いだ者としてベストは尽くしますよ。自分のところでごぼう抜きにあって、次の人にバトンを渡すというのは避けたい。だからといってどうこうできることばかりじゃないから、やっぱり一生懸命ベストで走るしかないんじゃないですか。


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工房内は壁や棚などは白で統一され、プロダクトコンセプトである「Emptiness」などの文字も目に入る。堀口さんの江戸切子への思いが表現されている空間でもある。

——堀口切子のロゴは、お祖父様の代から使っていたものだとか?

堀口:この羊のマークは小さい頃から見慣れていたんだけれど、なぜ羊なのかということは、自分が堀口切子を立ち上げたときに初めて聞いたんです。

昭和30年代……いわゆる映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の時代ですよね。あの時代におじいちゃんが、羊は紙を食べる、つまりお札を食べる=儲かるという意味を込めてロゴマークにしたんだそうです。羊はお金を食べちゃうから嫌われるという説もあるらしいけど、とにかくおじいちゃんは「よし!これからのしあがってやろう!」という思いを羊に込めたんです。

それを知ったとき、自分だってのし上がりたい、儲かりたいという気持ちはあるし、何よりあの時のおじいちゃんの気概を踏襲したいと思ったんです。それで同じ羊のマークを使って、硝子を切子という文字に変えたロゴにしました。


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——先代からの思いを繋ぐ素敵なエピソードですね。

堀口:そういえばこんなこともありました。初代のおじいちゃんから2代目へ、そして3代目の自分へと「秀石」の号を代々継いできたんですが、おじいちゃんがなぜ「秀石」という名にしたのかは、堀口家の誰もわからなかったんです。

自分が立てた仮説は2つあって、一つは硝子の成分の中で珪砂(けいしゃ)が大半を占めていることから、優れた石や砂という意味での秀石。もう一つありえるなと思ったのが、6工程の中で最も難しい「石掛け」にちなんで、秀でた「石掛け」になぞらえての秀石。

一昨年、おじいちゃんが作った会社「堀口硝子」で10代の頃から務めてきた従業員の方が辞められることになったんです。御年82歳で、昔はおじいちゃんの運転手もやっていた方でした。もしかしてと思って、僕が「秀石」の由来を知ってますかと聞いてみたら、なんとその方だけは知っていたんです。


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アトリエコート風の作業着は堀口切子のオリジナル。背中に切れ込みを入れ布の余裕をもたせているのも、加工の作業がしやすいようにとの理由から。破れた箇所は継ぎ接ぎをしながら大事に使い続けているという

——聞くことができたんですね。由来は何だったのでしょう?

堀口:2つ考えていたうちの前者のほうでした。こんなふうに、自分の中では見慣れていたり当たり前のことでも、よくよく掘り下げていくと深い背景が見つかることもあるんですよね。掘り下げていくことで、大事な背骨になるようなところが明確に見えてくるんだなとわかりました。もし掘り下げなかったとしても商売はやっていけるし、続いていくかもしれない。だけど、その辺りのことが後々必ず効いてくると思っています。

 

次世代へとバトンを繋いでいくために


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——「堀口切子」には親方である堀口さんのほかに、若い職人さんたちがいらっしゃいます。後継者を育てるという面で、どのようなお考えをお持ちですか?

堀口:「堀口切子」としては自分が創業者であり、いま3人の弟子がいます。この3人は僕と日頃から接していろんなことを共有しているから、自分が仮にいなくなったとしても「親方だったらこうするんじゃないか」「こういう考えなんじゃないか」っていうのは染み付いているんです。

でも、自分が亡くなった後に続いていく「堀口切子」を考えるとどうか。自分と一度も接したことがない人が入ってきて、どんどん代替わりしていったときに、話は変わってくるような気がするんです。そのときに、どうして「堀口切子」が生まれたのか、どういうことを目指そうと思っていたのかというところを、見誤らないようにしたいなと。

だから、たった4人の会社ですが経営理念があります。大事な言葉が壁にも書いてあるし、入社したら渡すプリント2枚の「堀口切子における基本姿勢」というものがありまして。


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——どんなことが書かれているのでしょうか?

堀口:たとえばプロダクトコンセプトとして「Emptiness(エンプティネス)」とあります。Emptiness、つまり余白や空白を大切にするということ。自分たちが作った製品は未完成である。使い手の手元に届いて、なんらかの要素が加わって初めて完成する。そうしたものづくりをしていこうと。

「何のために仕事をし、作業をするのかを考える」とも書いてあります。自分たちの仕事は硝子に真摯に向き合い、硝子加工を通して、文化・芸術の一翼を担うこと。それによって自分たちの幸せはもとより、人に感動と笑顔と驚きを与えることなんだ、と。

この「驚き」というのが大切で、自分はサプライズ感というものが必要だと思っているんです。人の気持ちが揺らぐときには驚きがある。だから、驚かすんだ。笑顔と幸せだけじゃなくて、驚きを与えるんだ。これも大切にしていることの一つですね。

——素晴らしいですね。背中を見て盗めというのではなく、しっかりと言語化して共有されているのですね。

堀口:「堀口切子」に入るときにはルールがあって、それは「後継者を育てること」なんです。自分たちは江戸切子という伝統工芸で食っている。いま江戸切子職人は84人いるのですが、みんな誰かしらから教わっている。

だから「堀口切子」では「一人が一人を教える」のをノルマとしています。そうすれば江戸切子職人の人数は減らない。自分は三澤を、三澤は坂本を、坂本は井戸本を教えるんです。


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「堀口切子」の職人、三澤世奈さん。明治大学在学中に堀口さんの作品に感銘を受け、2014年に入社。2019年に自身のブランドを立ち上げる。「親方は私が一番尊敬している人。ここで学んだことを自分の切子で出せるように、製作に励んでいます


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——なるほど。リレーのような形態になっているんですね。

堀口:これによって、先人から受け継いでいるものがあるからこそいまの自分があるっていうことを認識できます。また、いま自分が教わっていることは今後誰かに教えなくちゃいけないことなんだって認識しながら覚えていけるんです。自分がわかればそれでいいっていう話じゃないから、メモの取り方ひとつをとっても変わっていくはずです。2年目の人は、その2年で得たものを後輩に教えていけばいいんです。

ちなみに、うちは経験者は取らないんです。「堀口ルール」があって、道具の置き方ひとつにしても「これ」というのが決まっているので。経験者だと、それまでの習慣を抜かなくちゃいけないので、難しいと思うんです。

——チーム作りで大切にしていることはありますか?

堀口:「共有する」です。一人ひとりの能力が高くても、それぞれのベクトルの方向が違うとパワーが半減しますし、すごい能力があるやつ同士が真反対だったら超最悪でしょう。だからベクトルを同じ方向に向けたい。そのためには、共有することです。

「大事なことは伝えろよ」っていうと、その大事かどうかのレベルが違っちゃったりしますよね。最初は大事だと思っていなかったけど、積み重なって大事な案件になっちゃったということもありますし。大事か、大事じゃないかはとりあえず後回しでいいんです。極力、全員で共有しています。


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——日本国内あるいは海外に向けて、今後伝えていきたいことはありますか?

堀口:江戸切子自体、まず知られていないんですよ。日本の東京でカットグラスをやっていること自体が知られていないですから。だから、知ってもらいたい。見てもらいたい。触ってもらいたい。使ってもらいたい。それに尽きると言えば、尽きます。

江戸切子にとってイギリスって、ルーツに関わる場所なんです。明治の初め、英国人のエマニュエル・ホープトマンさんという人に技術を教えてもらって、それがいまの江戸切子に繋がるんです。一方、いま英国のカットグラスは全盛期から比べると下火になってきてしまっているという現状もあります。

だからいま自分が考えているのは、江戸切子をイギリス里帰りさせたいなということなんです。自分たちが作ったものを在英の日本大使館で展示したり、エディンバラ大学のガラス科の学生さんに指導をするプロジェクトも動いています。当時エマニュエル・ホープトマンさんが教えにきてくれたことへの恩返しと言ったらおこがましいかもしれないけど、なにかできることがあるんじゃないか。そんな思いでこれからも関わっていきたいです。

 

堀口さんにとって、おいしいとは何でしょうか?


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堀口:おいしいっていう言葉って、料理人に送る最高の褒め言葉じゃないかなと思います。大げさに言ってしまうと僕は料理をいただくとき、その料理人の人生を切り売りして食べさせてもらっている感じがするんですよ。おいしいものを食べた感想を伝えるのに、いわゆる洒落た言葉や表現もあるのだろうけど、そんなことより何よりも「おいしい」でいいんだなって思うんです。

江戸切子でも、最初はどんどん技術的に深いところを目指そうとするんです。でも途中で、「あれ? こんなに技術を極めているのって、誰のためにやっているんだ?」って、ふと立ち止まるんですよ。そして最終的に、もっとわかりやすくていいんじゃないかというところに行き着くんです。江戸切子なら「うわあ、きれい」とか「なんかいいね」とか。それで十分だったりするんですよね。

だから想像だけど、やっぱり料理人の方はおいしいものを食べてもらいたいって思っているはずだし、「おいしい」のひと言で十分なんじゃないのかなと。人生を賭けておいしいひと皿を作ってくれてた料理人の人に対して、自分が得た感動を伝えるための、本当にわかりやすくて最高のひと言なんだと思います。


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