和食だけがもつ素晴らしさとは何か。

新たなステージから贈る “おいしさ”と“美”の共演。「わたなべ」店主・渡邊大将さん

東京
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おいしんぐ!編集部

地下鉄・白金高輪駅から徒歩1分ほどの、大通りに面した一角。ここに、2021年1月に開店して間もなく「いま、東京で最も面白い店」のひとつと噂される日本料理店がある。

店内に足を踏み入れると目に入るのは、白漆喰の壁、フカフカとした紅の絨毯、大きな白木の1枚板で設えられたカウンター席。その向こうに広がるのは、美しく整えられたオープンキッチンだ。

中央のまな板にはスポットライトが当たり、まるでこれから幕が開けるステージのよう。奥に置かれた削り箱や銅鍋などの道具ひとつひとつが存在感を放ち、今夜はどんな料理が出てくるのかと、ワクワクした気持ちにさせてくれる。

このステージ……いや、カウンターの向こうに立ち、シンプルながらも独創的な料理で我々を驚かせてくれるのが、若き店主・渡邊大将さんだ。学芸大学の「件(くだん)」で修行を積み、独立して三軒茶屋に「鈴しろ」を開店すると立ちどころに人気を獲得。サービス、料理、人との出会いと、徐々にステップアップをしながら「自分が本当にやりたいことは何か」を考えてきた。3年前、九死に一生を得た“ある事件”をきっかけに、次なるステージに上がることを決意し、新店「わたなべ」を開店するに至ったという。

「和食の世界にある美しさ、審美眼みたいなものに惹かれている」と渡邊さんは語る。その言葉のとおり、店内の空間や空気が調和のとれた居心地のよさと美しさを感じさせてくれるし、料理からは素材や器を含めたおいしさが、味覚のみならず五感すべてを楽しませてくれる。そしてそれが、この店が人々を惹きつける大きな魅力となっている。

オープンから半年経ったいま思い描いていることとは? 和食だけが持つ魅力とは? そして、おいしいとは?……どの問いに対する答えも、料理と同じく、渡邊さんならではのオリジナリティがあふれていた。

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外観 おいしんぐ!編集部


外観 おいしんぐ!編集部
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2021年1月にオープンした「わたなべ」。白金高輪駅のほぼ真上に位置する。

 

オーストラリアで芽生えた、日本への意識。

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現在37歳の渡邊大将さん。「いま、めちゃくちゃ楽しいですよ。料理は楽しいです!」

——渡邊さんが料理人を目指したのはいつからでしたか?

渡邊:実家が山梨県の富士吉田という街にある喫茶店なんです。母の実家も和菓子屋なので、小さいときから食が身近にあり、なんとなく自分もそういう道に進むのかなと。長男だし将来は自分がお店を継ぐかも、というのが漠然とありました。自分でお店をやるならどうしようか、ということも逆算して考えていましたね。


おいしんぐ!編集部
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店内はカウンター席のみ。大きな白木の一枚板の向こう側にスポットライトを浴びた渡邊さんが立てば、まるでステージのような空間に。

——では、高校を出てからは料理学校に?

渡邊:いや、それが……。いま考えてもよくそんなことをしたなと思うんですが、高校を卒業してすぐにオーストラリアへ1年間のワーキングホリデーに行ったんです。就職はしようと思っていたけど、その前に1年ぐらいならいいんじゃないかなと。

——オーストラリアへ?

渡邊:父親の知り合いがいたからっていうのが理由のひとつなんですけど。向こうでも働けるし、なんか面白そうだなって。ブリスベンに行ったのですが、すごくいい街でしたよ。僕がいま和食の仕事をしているのは、そのときの経験がけっこう大きいですね。


おいしんぐ!編集部
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——と、いいますと?

渡邊:日本国内にいるとわからなかったことなのですが、海外の人、例えばオーストラリアの人は、よほど日本に興味を持っている人でないかぎり、日本のことなんて全然知らないんですよ。中国人、韓国人、日本人はみんな同じに見えるし、「ジャパン……どこそれ? アジアのどこか?」みたいな感じで(笑)。

僕自身も出会った人たちとの会話のなかで、日本について語れるものが何もなくて、恥ずかしい思いをしました。ああ、自分は日本のことを何も知らないんだなって思って。英語がしゃべれるのも大事だけど、中身をどれだけ理解しているかもすごく大切だなと気づいたんです。


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——18歳で気づいたというのは大きな経験でしたね。

渡邊:小手先だけで英語がしゃべれても、語れるものがなかったらと逆に恥ずかしい。時代もいずれは世界へ、グローバルな社会へ……ということを考えたときに、日本人としてのアイデンティティを仕事にするのは、強みになるなと。その結果、いま和食をやっているというのはありますね。何かを学ぶことよりも、自分が持っているものを発信することが大事なんだなと、オーストラリアで強く感じました。

——1年後、帰国してからはどうしたんですか?

渡邊:2~3年ぐらい、山梨で叔父さんの和菓子屋を手伝っていました。和菓子も面白かったのですが、まだ道は見えていませんでしたね。本格的に飲食の世界に入ったのは、昼に和菓子屋をやりながら夜に地元の飲食店でアルバイトするようになってからです。僕、どっちかというとスロースターターというか、回り道をしているほうなんですよ。

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天然の真昆布と2種類の削り節で出汁を取った椀。季節によって変わる椀種は、夏の魚オコゼをさっと揚げたもの。「鮪節と本枯節の2種類を使っています。なるべくお客様の来店時間に合わせて準備し、削りたてを提供しています」。

 

東京の人気店でサービスマンとして修行。

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——山梨から東京へ来たきっかけは、何かあったのですか?

渡邊:漠然と実家を継ぐのかなという思いもあって、それなら東京でイケてる飲食店をそのまま地元でやればいいかと思ったんです(笑)。グルメ雑誌を見て気になったお店があったので、勉強のために数年働かせてもらおうと。

——それが学芸大学の「件(くだん)」ですね。おでんがおいしく、日本酒のラインナップも豊富なお店ですね。そこで働いていた頃の渡邊さんは、まだ若いながらも日本酒の知識を持つ店員さんとして注目されていましたね。

渡邊:最初は何もわかっていませんでした。それまでは身内の店で働いていたから、25歳でしたけど社会人1年目のような状況で。生意気だったし、上から目線だったし、めちゃくちゃ怒られましたよ(笑)。

2008年から4年間ぐらいいて、そこで礼儀とか基礎的な部分を教えていただきましたね。休みの日も飲み歩いたりとか、蔵元さんをひとりで訪ねたりもしましたし、自分でもとにかく勉強しました。

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——「件」ではお料理ではなく、サービスの仕事をされていましたよね?

渡邊:ほぼサービスマンでした。料理の面白さや奥深さ、楽しさに気づき始めたのは自分のお店を始めてからですね。いまでもまだ完璧にわかっているわけじゃないんですけど。

——料理がやりたくて独立したのではなかったのですね?

渡邊:自分のやりたいことが最初はよくわからなかったんです。自分に何が向いているか、自分は何が好きなのか。僕の場合は、やりながら確かめていったっていう感じです。だからとりあえずはじめてみようっていうのが、まず最初ですね。

——とりあえず、だったのですか?

渡邊:初めから自分の理想通りの店をやるなんて無理ゲーだなって、ずっと思っていたんですよ。料理のことも勉強して、休みの日も食べ歩きしたり、器も見にいきたいわけです。開業費もある程度必要なのに、修行時代はそんなに給料も高くはない。これでは本当に無理なんです。

だったらとりあえずでも、小さいお店を自分で始めてステップアップしていけばいい。そこである程度利益を出せるようになれば、器を購入したりもできる。開業のために借りたお金も完済しきれば銀行からの信用も上がるし、最初は少額だったとしても、次はもうちょっと大きくしていけるって。

 

店を構えて気づいた「やっぱり料理が好きなんだ」。

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——とりあえず始めた自分のお店というのが、2014年に三軒茶屋で開店された「鈴しろ」ですね。こちらも、とても話題のお店でした。

渡邊:「鈴しろ」をやりはじめたら、思っていたより自分は料理が好きなんだっていうことが
わかったんです。料理をやっていけばやっていくほど、やっぱり料理が好きなんだなと。

料理の根源的な面白さって何なのかと考えることがあるんですけど、料理って、ある程度の技術があれば、たぶんできちゃうものなんですよ。僕がいま料理をやっていて一番面白いと感じるのは、「こういうことやってみようかな」とか「こうしたら面白いかもしれない」と思ってやってみて、すごくいいもの出来上がったとき。やっぱり修行時代は、自分でいろいろ試すことなんてできなかったので。

——あくまでそのお店の味を求められるわけですからね。

渡邊:クリエイティブっていうとちょっとカッコつけた言葉になっちゃうんですけど、何かを生み出すのって一番テンションが上がるし、楽しい。それでお客さんに「おいしい」とか「この料理すごいね」と言ってもらえるとやっぱりすごく嬉しい。自分でお店をやるようになって、楽しさがわかってきたんです。そこから「あの食材を使いたい」「こういう料理をやりたい」「こんな器を使いたい」っていうような感じでだんだんとステップアップしてきた感じですね。

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——「鈴しろ」がとても繁盛していたにも関わらず、5年で閉店して新店「わたなべ」をスタート。そこにはどんな思いがあったのでしょう?

渡邊:明確に期間を決めていたわけじゃなかったんです。そういう意味で一番強く移転を考えたのは、交通事故でした。

仕事の帰り、自転車に乗っているときにタクシーと衝突してしまったんです。けっこうな事故でした。担当警察官の方に「現場を見たときに死亡事故だなと思った。よく生きていたね」と言われましたから。大腿骨が真っ二つに折れたんですが、幸い脚だけで済みました。顔にもすごい傷があったけれど治りましたし、後遺症もないし。まあ、運がよかったですよ(笑)。

——それは大変な経験をされましたね。

渡邊:救急車で集中治療室に運ばれて、1ヶ月半ぐらい入院したときに、ベッドの上で「まだ死ねない。まだやりたいことがある」って。自分の年齢も考えて、そこで移転をしようと思ったのが理由ですね。


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岐阜の長良川の天然鮎を使った春巻。「もち米と一緒に炊いた内臓を巻き上げ、揚げています。今日の鮎は躍動感がありますね(笑)」。

 

自分は何が好きなのか、何がしたいのか。

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——そこから「わたなべ」開店への準備期間に入るわけですね。

渡邊:「鈴しろ」を閉めて、お世話になった全国の生産者さん、農家さんのところに挨拶に行きました。ありがたいことに海外でもお仕事をさせてもらう機会もあって、すごく勉強になりましたね。5年間がんばったしと思って、1年半ぐらいは回っていました。本当はもっと早く再開するつもりだったんですけど、2020年春に緊急事態宣言が出たので、その様子見で少し伸びた感じです。

——その1年半は、渡邊さんにとってどんな時間でしたか?

渡邊:仲間内からは「30過ぎて自分探し」とか言われましたね(笑)。でも昔から僕は「自分探し」っていう言葉に違和感がありました。たぶんみんな、自分に何が向いているとか、何が好きかなんてわからないんですよ。頭で考えていたのと、実際自分で経験してみたのでは違うことって、たくさんあるわけで。

大切なのは自分探しじゃなくて「自分作り」なんじゃないかなって思うんです。自分の経験値や自分が見たもの、体験したものに重きを置くというか。経験を蓄積していって、自分を作っていく作業です。この何年かをかけて自分が本当に何が好きなのか、どういうことがしたいのかを、いろんな経験をしながら少しずつ確かめてきたっていう感じですね。


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——自分探しではなく自分作りとは、いい表現ですね。1年半でいい出会いなどはありましたか?

渡邊:そういう意味では、出会った人すべてですね。たまたま来たお客様から学ぶこともあれば、研修で働かせてもらった店の20歳ぐらいの子から刺激を受けることもあれば。

——他のお店に入って研修もされていたんですね。

渡邊:フレンチ、中華、焼肉屋さんでもやりましたね。自分でお店を持ったらもう誰かの下で働けることってたぶんないなと思って、今までやってこなかったジャンルの店で少しでも吸収できるものがあればいいなと。

僕は基本的に突撃スタイルなので、面識のない店にもいきなり電話で「実はこういうことを考えていて、勉強のために何でもやりますので!」と。研修と言うと聞こえはいいですけど、それこそお皿洗いとかトイレ掃除とか、何でもやりますという感じで働かせてもらって、その間にいろいろ見せてもらったりしました。

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——そこではどんなことを得ましたか?

渡邊:小さいことから大きいことまで、数えきれないですね。当たり前ですけど、それぞれのお店によってすべてが違うんだなと。こんなすごいワインを開けるお客さんがいるのかとか。もともと好奇心旺盛なほうなので、自分の知らない世界を見るのは面白かったです。

 

内装と器が盛り立てる「わたなべ」の世界観。

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——そして2021年1月にオープンしたのがこちらのお店、「わたなべ」。まず調理スペースがまるでステージのようにも見える、カッコいい内装も特徴的だと思うのですが。

渡邊:いやー、ここまでステージみたいにするつもりもなかったんですよ(笑)。ここに関してはデザインしてくれた内装屋さんの意向が強いかもしれません。昔から僕のことを理解してくれている方で、新しくお店を出すならこの人にお願いしたいなと思っていたので。

いろんなお店に一緒に食べに行ったりしながら、常々「いつかお店をやるならこういう感じがいい」と話したりもしていたんです。その関係性かもしれませんね。僕がまずイメージを伝えて、あとはほとんどお任せしました。そうしたら「渡邊さんぽい感じで作ってみたよ」と。

——渡邊さんぽい感じ……なんとなくわかる気がします。

渡邊:デザイン画が上がってきたときも、ほとんど反対もしませんでした。強いていえばこの赤いカーペットぐらいですかね。壁を白漆喰にすることと、木の一枚板カウンターを使うことは決まっていたんですが、そこに赤いカーペットの床を提案されまして……。

カーペットだとお酒をこぼしたら大変だなとか、水拭きできるような素材がいいんじゃないかなとか思ったんですけど、「いや、これを夢で見たから。どうしてもやりたい」と言われて、譲ってくれなかった(笑)。

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——「夢で見たから」という理由で(笑)。

渡邊:「騙されたと思ってこれにしなさい」と。でも、結果的にはすごくよかったです。掃除もそれほど大変じゃないし、汚れも気にならないし、雰囲気も気に入りましたね。

——さきほどから何度か器の話が出てきていますが、器選びもお店で大切にしていることのひとつでしょうか? 

渡邊:はい、大切にしていますね。どちらかというといま生きている作家さんのものを選ぶことが多いです。それは単純に応援したいという気持ちもありますし、作家さんによってはデザインのリクエストも受けてくれるので、それはすごくいいなと思って。

今日の鮎を載せた皿もそうですね。安達健さんという作家さんに、もともとあったものから少し低めにアレンジして作っていただきました。安達さんの作品は、すごくオリジナリティを感じるんです。

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——渡邊さんが選ぶ器に共通点はありますか?

渡邊:僕は買う・買わないの判断はめちゃくちゃ早くて、悩んだりしないです。感覚的で、自分の中では言語化できていないんですが、この器にこういう料理をよそったらカッコいいなと浮かぶこともあるし、作品として素晴らしい! と一目惚れして買うこともあるし。

共通点を挙げるとすれば、人の手が入っている感じというか、既製品にはない感じというか。僕がいいなとか美しいなと思うのは、人の手で作られたことを感じさせてくれる器かもしれません。

 

和食だけに存在する、美しさのようなもの。

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——「鈴しろ」から「わたなべ」に変わり、料理のスタイルという側面で変化はありましたか?

渡邊:はい、変化しました。これは本当に、お客さまに鍛えてもらったという感覚が一番近いですね。「鈴しろ」を始めたときは単品料理もある小料理屋さんみたいな感じだったんですけど、徐々にグルメなお客様も増えていって、その要望に応えながら変化してきた感じですね。今度はあの食材を使ってみよう、こういうことをやってみようって。


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——料理を作るときに大事にしていることは何ですか?

渡邊:「素材を活かす」「なるべくシンプル」「オリジナリティ」。ほぼ、この3つだけです。

——納得です。食べていて、どの料理からも渡邊さんならではのオリジナリティを感じますから。

渡邊:僕は有名な料亭や日本食のお店出身ではないので、昔はそれがコンプレックスだったこともあったんですけど、いまはかえって強みに感じているというか。しがらみがないし、こうしなきゃいけない、こうであるべきということがまったくない。すごく自由で、自分の赴くままに料理できる。自分のなかで「こうしたほうがいいんじゃないかな」というのがあって、それを信じてやっているという感じです。


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——渡邊さんにとって、和食の素晴らしさはどんなところにありますか?

渡邊:そうですね。和食の素晴らしさってたくさんあります。正直に話しちゃうと、自分の中でまだ答えが出ていないんですよ。よく「和食には四季がある」とか言われますが、それは他の国の料理にだってあります。素材を生かす料理だって、別に和食だけの強みではない。

じゃあ和食の強みって何なのか。僕が現時点で言えることは、和食の世界にある美しさ、審美眼みたいなものに惹かれているというか……。例えば器にしても地域によってそれぞれ、土を活かしたものもあれば、磁器のツルっとしたもの、絵付けされているものがあって。そういったものに、自分の感性で作った料理をよそって、料理としての美しさみたいなものを表現できる。これはすごく楽しいし、面白いし、素晴らしいことだなって思いますね。器だけじゃなくて、内装の雰囲気もそうです。和食独特の感性っていうか、これは他の料理にはないものなんじゃないかなと。

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一番出汁をベースにし、炭火で焼いたトウモロコシと鱧を混ぜて炊いた土鍋ご飯。「今日はホワイトクイーンという品種の甘みのあるトウモロコシを使いました」。

——とても素敵なお答えを聞けました。

渡邊:美しさについてもすごく考えるんですけど、絵に例えたらモネの絵みたいな美しさと、水墨画みたいな美しさは全然違うものですよね。でも、どちらも美しい。何を美しいと思うかは人それぞれなんですけど、日本特有の感性や美しさの感覚というものがあって、そこに面白さを見出しているかもしれないですね。

——いま、料理を作っていて楽しいですか?

渡邊:めちゃくちゃ楽しいですよ。料理は楽しいです。

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——料理人としてはどこを目指していますか?

渡邊:これはすごく単純な答えで、僕は「だいちゃんの料理が食べたい」って言ってほしい(笑)。和食業界を変えてやろうとか、革命を起こしてやるとか、そういう気持ちはほとんどないです。単純に自分がいいなと思う作家さんの器を使って、自分がいいなと思う料理を作って、お客さんが共感してくれたらすごく嬉しい。それが自分のアイデンティティというか、自分が生きていることなんだなって。

——今後はどんなお店にしていきたいですか?

渡邊:正直に言っちゃうと、こういうのをやりたいというのもないです。ただシンプルに、お客さんに食べに来てもらって、満足して帰ってもらうのが結果的に未来につながるのかなって考えています。

 

では、最後に…。
渡辺さんにとって「おいしい」とは——?

おいしんぐ!編集部

渡邊:おいしいっていうと、まず味覚に対してのおいしいっていうのが第一にあると思うんですけど、でも僕はそれだけじゃないと思っていて。たぶん、一緒に食べる人だとか、シチュエーションだとか、文化的なものだとか、いろんな要素が絡みあっているんだと思います。おいしいという言葉の下に、すごくいろんなものが何層にも重なっていて、その上に成り立つものなんじゃないかなって。

企画・構成/金沢大基 文/古俣千尋 写真/倉橋マキ

おいしんぐ!YouTubeチャンネルのインタビュー動画

おいしんぐ!のYouTubeチャンネルでは、渡邊大将さんのインタビュー動画を見ることができます。
お店の雰囲気や料理、渡邊大将さんが気になる方はチェックしてみてください。

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