うどん旅に出掛けよう。島根石見編

島根県益田市発祥「うどん」の謎を紐解く旅 <後編>

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島根県益田市発祥「うどん」の謎を紐解く旅 <後編>

益田市発祥のちょっと変わったうどん文化を紐解くべく、我々は益田市のとなり浜田市へと車を走らせた。

系譜をたどる「うどん旅」 其の1

かつて浜田市内には「うどんの今田」という店があり、萬栄のうどんとよく似たうどんを提供していたそうだ(現在は閉店)。その「うどんの今田」は現在、店名を変えて、浜田市の郊外で再びその味を提供しているとのこと。

著者撮影
その店が、こちら「陽気な狩人」である。その名の通り、うどんだけでなく、猪肉をはじめとした、ジビエ料理も提供している。敷地内には肉の処理施設があり、レストランと併設されているケースは他に例が無いという。

イノシシ肉が楽しめる「猪肉さっと炒め」

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なかでもしし肉のさっと炒めは、こちらの看板料理の一つ。併設の処理場でさばいた、イノシシ肉と自家農園で取れた玉ねぎを炒め合わせた、シンプルながらも奥深い味わいの料理。しし肉の力強い弾力と脂の旨み、タマネギの甘さとシャキシャキとした歯ごたえが楽しめる。

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ご主人の今田さんは非常にユニークなお方。自らを遊びの達人と称し、様々なことに挑戦し続ける御仁。その魅力は紙面ではお伝えしきれないので、ぜひ一度会いに行っていただきたい。人生の示唆を頂けること間違いなし。

萬栄と同じ系譜を感じる「特製うどん」

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さて、肝心のうどんである。鳴門が蒲鉾に、ワカメがのっているなど、微妙に違うが、肉・お揚げ・生卵・ネギの組み合わせ、特製うどんという名称は萬栄と同じだ。味は、萬栄よりもコシのある感じだが、エッジの丸さや、ややウェーブのかかった平薄麺、甘みのあるつゆは、やはり同じ系譜を感じさせる味わい。

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そして気になる製麺機。厨房を覗かせていただくと、やはりあった。正面のギアは2つにへり、洗練された感じになっているが、挙動は同じ。ガラガラとビートを刻みながら、麺を伸ばし、そのままカットからお湯へダイブ。萬栄の機械とまさに同じであった。

話を伺うと、やはり「うどんの今田」は、萬栄の初代の時代に修業をし、独立をした店であった。現在、「陽気な狩人」で供するレシピは、すでにご主人のオリジナルの領域まで昇華されているが、その大本にあるのは、初代萬栄の味であった。

「うどんの今田」閉店の際は、店の外に大行列ができ、「もともと陽気な狩人」では出す予定がなかったうどんも、お客様の熱いリクエストで出すようになったそうだ。この独特のうどんが、町の人のソウルフードとして根付いていることを教えてもらい、我々は陽気な狩人を後にした。

もう一軒、つながりがありそうなうどん屋の情報を得ていた我々は、再び益田市へと向かった。

陽気な狩人

 

 

系譜をたどる「うどん旅」 其の2

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手打ちうどんの「亀甲屋」は、5年ほど前にオープンした比較的新しいお店だが、提供しているうどんには萬栄のエッセンスが感じられるらしい。萬栄、陽気な狩人で、そこに至る系譜のヒントはつかんでいるので、それが確認できれば、ほぼ間違いないだろう。

人気No1の「亀甲屋うどん」

著者撮影
人気No1の亀甲屋うどんとして登場したのがこちら。萬栄、陽気な狩人につながる、特色は確かにある。肉、お揚げ、蒲鉾、ネギは共通。オリジナルの点として、とり天がついていること、卵に火がやや入っているところが異なる。麺の特徴である、幅広で薄い点、エッジが丸く、やや乱れのある点、そして、もちっとした食感はかなり近く、甘めの汁も同じ。

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厨房を覗かせていただくと、やはりあった!独特の形状をした製麺機。新型機なのか、かなり洗練されている。益田市内の工場で作ってもらったそうだ。製麺の流れも萬栄に近く、生地は一晩寝かせるほか、うどんの素を入れているらしい。店長の篠原氏によると、系列店で焼鳥屋を展開しているため、とり天を使っているとのこと。うどんは、社長がうどんの今田で修業をして開業したそうだ。

これで線が一本につながった。

「萬栄」→「陽気な狩人(うどんの今田)」→「亀甲屋」とつながり、亀甲屋は萬栄から見て孫世代のポジションにあたる。

店舗名にまったく関連性が無いので一見わかりづらいが、すべては初代萬栄に連なる系譜にあり、エッセンスは引き継ぎながら、店舗の独自性を加えて地域の名店として根付き、この地域独特のうどん文化を形成していったのだ。
 

亀甲屋

 

 

ご当地グルメはこうして見出される

「益田・浜田エリアに広がるちょっと変わったうどん文化」は萬栄から始まった独特のうどんが、独立した弟子たちによって進化し根付いて行ったことで形成されたことが今回のうどん旅で分かった。

よくあるご当地グルメのいわれに、『昭和のころから地域で親しまれ、ソウルフードとして愛されてきた』というくだりがあるが、このうどんはまさにそれに合致する。どんなご当地グルメも、最初に開発した人なり店があり、それを普及させた人やお店がある。萬栄は最初に開発したお店で、弟子達はそれを進化させ普及した店なのだ。

ここで、このうどんの特徴を再度まとめたい。
 

  • 基本の具は、甘辛く煮た肉、お揚げ、鳴門(蒲鉾)、ネギ、生卵
  • 基本の具に加えて、独自でトッピングを加えても良い
  • 生地は、秘伝の素を加えて一晩以上寝かせる
  • 製麺は専用の製麺機を使い、そのまま茹で麺機へ投入する
  • 麺は幅広で薄く、ややウェーブがかかり、もっちりとした食感
  • 汁はやや甘め、色は濃い

このうどんについては、提供店舗がどのように広まっているのか、整理された情報が無い。もし、お近くのうどん屋さんで、上記の条件を満たすうどんが提供されていたら、ぜひ情報をお寄せいただきたい。この地域独特の美味しいうどんが、より多くの人に知られることを願ってやまない。

 

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