300年前からの伝統文化を体験しよう。

江戸時代にタイムスリップ!? 宇多津町の入浜式塩田で塩づくりにチャレンジ!

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おいしんぐ!編集部

丸亀市と坂出市に挟まれ、海に面した宇多津町。美しい瀬戸内の島々や瀬戸大橋を見晴らすその海浜エリアに、およそ900平方メートルの復元塩田がある。

明治時代には日本有数の「塩の町」としても知られた宇多津町の入浜式塩田。現在もここで浜師と呼ばれる人達が、手間ひまをかけておいしい塩をつくりながら、伝統の文化と技術を伝えている。

入浜式とは、この地で江戸時代初期に開発され、昭和30年頃まで盛んだった塩づくり方法。砂浜で塩を作るところを「塩田」といい、塩の干満の差を利用して海水を塩田の砂にしみ込ませ、さらに砂に海水をまき、太陽熱と風の力で水分を蒸発させ砂に塩分を付着させます。それをろ過して濃度の高い海水をつくり、釜で煮詰めて塩を精製する。

一時期は宇多津町一帯の海岸線沿いが塩田で埋め尽くされるまで拡大し、女性や子どももふくめ町民の8割が塩づくりの仕事に関わっていたという。しかし、時代が進むに従い技術も進化し、昭和31年には、入浜式塩田から流下式塩田へと転換し、昭和46年からは国の方針により塩田を全く必要としないイオン交換膜製塩に切り替わった。

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宇多津の海に面した入浜式塩田。ポンプで海水を引き入れる仕組み以外は、昔のまま復元をした。中央に塩分がついた砂を濾過する「沼井(ぬい)」が4台設置されている。


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塩田の隣に建つ茅葺き屋根の建物「釜屋」。かん水をためておく「かん水壺」と、平釜でかん水を煮詰め塩の結晶をつくる設備が備わっている。 

「昔ながらの地域産業の歴史を伝え、貴重な塩づくり技術を体験できる場所を作りたい」――今からおよそ30年前、そんな思いから臨海公園の一角を整備し、入浜式塩田を復活させた。町に残っていた入浜式塩田塩づくりの経験者たちから製法や設備、道具のことなどを聞きながら、ひとつずつ復元させていった。近年は近隣の小学生が遠足や修学旅行で訪れるほか、ここでしか味わえない体験ができると観光客にも人気のスポットとなっている。


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入浜式塩田塩づくり歴11年、真っ黒に日焼けした川染順司さん。「地域の文化を受け継ぎたい」という思いで働く30代の若手もいるのが頼もしい。

現在、この塩田で塩づくりに携わる浜師は4人。季節を問わず晴れた日にはこの塩田に出て、技と経験を必要とする力仕事をおこなう。この道11年のベテラン、川染順司さんに話を聞きながら、入浜式塩づくりを体験させてもらった。

【①浜引き】
海水をまく前に、砂の表面積を広げる作業。馬鍬(まぐわ)をひき、砂に筋目をつける。


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【②浜飼】
塩田の砂地の下から毛細管現象により浸透してくるのを助けるため杓で海水をかける。1日に2~4回の作業を3~4日連続でおこなう。もしも途中で雨が降ってしまったら、最初からやりなおしとなる。


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【③入鍬】
柄振り(えぶり)という道具で塩がついた砂を集め、沼井(ぬい)という濾過するための台に入れる。砂はかなりの重さがあり重労働。


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【④穴すえ/⑤もんだれかえ】
沼井に入れた砂をならし、上から濃い海水をかける。


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【⑥あげ水】
担桶(にないおけ)で海水を沼井の中に入れて砂についた塩分を洗い流し、さらに塩分濃度を上げていく。こうすることで、砂についた塩が溶け、濃い塩水となって横の瓶(下穴がめ)にたまる仕組み。
担桶に入れた海水の重さは約60kgで、1日で15回のあげ水が必要。現在は3~4人で手分けしているが、昔は1人で15回やっていた人もいるという。(体験はここまでで終了、このあとは見学)


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【⑦採かん】
あげ水によって瓶にたまったかん水を担桶に移す。


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【⑧釜炊き】
ここからは室内の作業へ。釜屋の中にある平釜(ひらがま)でかん水を煮詰めていく。月に1~2回の作業で、1回に5時間ほどかかる。現在はステンレスの釜だが、昔は鉄釜だった。また木炭や石炭を使っていたため、火を絶やさないよう常に見張りが必要だったという。

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【⑨打ち上げ】
煮詰めた塩を取り出し、塩受けに移す。


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【⑩塩床】
塩受けから塩床(しおどこ)という木の箱の保管庫に移す。自然滴下させて少し黄ばんでいる部分のにがりを落とす。このあと、ふるいにかけてゴミを取り除き、より白くサラサラの塩に仕上げていく。

一見、簡単そうに見える作業でも、習得には1年から3年かかるものも多いという。また、降雨が少ない香川県とはいえ、塩田での作業の途中で雨が降ってしまえば、砂についた塩がすべて流れてしまう。


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「途中で雨が降ったら最初からやりなおしです。3~4日晴れが続かないと、作れないんです。天気予報なんてなかった昔の人は、『海の向こうの島の上に雨雲があったらこっちにも雨がくるぞ』みたいに予測してやっていたそうです。現在はポンプを使って海水を汲み上げていますが、昔はもちろんなかったですし、海から直接海水をくみ上げて塩田にかける製法などは本当にしんどかったと思いますよ」と川染さん。

入浜式塩づくりの仕事を始めて11年。川染さんはどんな思いで取り組んでいるのだろうか。


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「最初は、塩づくりなんて簡単だろうと思っていたんです。でもいざやってみるとかなりの重労働で驚きました。しんどくてやめようと思ったこともありましたよ。でも、一度はこの町からなくなってしまった入浜式塩田を、ぼくは残っていた浜師の方から直接技術を教えてもらうことができた。だからこそそれを受け継いで、次に伝えなければと。そういう使命感をもってやり続けています。入浜式塩田や、ここでとれるおいしい塩のことを知らない人が多いので、一人でも多くの人に知っていただけたら嬉しいですね」

最後に、川染さんにとっておいしいとは? をうかがってみると、こんな答えが帰ってきた。

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「お客さんが『おいしい』と言ってくれたら、それが『おいしい』なんですよね。自分たちが判断するものじゃないなと思います。ぜひ、宇多津の塩のおいしさを味わいにきてください」。

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入浜式の塩(200g)520円。宇多津臨海公園内の施設「うたづ海ホタル(宇多津町産業資料館)」内のショップで購入できる。このほか、塩アメやにがりなども販売している。


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入浜式の塩は、海のミネラルを含んでいるため、味が非常にまろやか。化学製塩でつくる食塩と違って、ピリッとした辛味もないのが特徴だ。パックや瓶入りの商品は、臨海公園にある「うたづ海ホタル(宇多津町産業資料館)」内のショップや近隣のスーパーなどで販売している。地元の人いわく、この塩でつくるシンプルな塩むすびが最高なのだとか。

瀬戸内の豊かな海水、さんさんと降り注ぐ太陽光、300年を経て人から人へと受け継がれてきた技術。安く大量にという機械生産とは真逆の、手間ひまと労力をたっぷりとかけて「おいしい」を生み出す入浜式の塩づくりは、いまの時代にこそ体験してみる価値がありそうだ。


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塩作り体験は90分(13:30~15:00)、5人以内の1グループで1,500円。1人増えるとごとにプラス200円。1週間前までに要予約。天候により中止となる可能性あり。受付は「うたづ海ホタル」窓口にて。

企画・構成/金沢大基 文/古俣千尋 写真/曽我 美芽

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